コロナ自粛「心の不調、どうしたら…」 徳田毅医師に聴く


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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で長期化する自粛。先の見えない事態に不安を募らせストレスや心の不調を訴える人が増えてきている。行動が規制される自粛中、心の健康を保つため、どうすればいいのだろうか。

(問山栄恵)

「情報集めすぎ」「やらされる感」避けよう

 沖縄県内企業の産業医としてストレスマネジメントを行っている、とくだ心療内科(うるま市)院長の德田毅医師は「自粛中は、なるべく快適な環境を整え、今回の自粛の意味を個々がしっかり理解し主体的に行うことだ」と強調する。

 感染を防ぐための外出自粛や行動制限などで、緊張感が長時間続くと強いストレスにつながる。德田医師は「人間は環境の中で生命活動をしている。その環境が合わないといろんな不都合が生じる」と話す。

 心身の不調を医学的に「適応障害」という。心身の不調には、心の変化として「不安でいっぱい」「やる気が出ない」「悪い事しか想像できない」などがあり、身体的には「眠れない」「身体がだるい」「食欲がない」などの兆候が出る。行動の変化としては「物に当たる」「ケンカしやすい」「家事ができない」などがある。これらの変化が出て日常生活に支障を来す場合は、専門医への受診が必要になる場合もあるという。

 適応障害を解決するには「環境を変えること」だと指摘する。自粛中は部屋の模様替えをしたり、風通しをよくしたり、アロマをたいたり花を飾ったりするなど、快適な環境を整えるのがいい。散歩も、広い公園でお互いに距離を取れば問題ないという。

 ストレスへの対処としてアウシュビッツ強制収容所の生存者に関する研究を例に、三つの「感覚」を持つのが大切だと言う。

 一つは、「自分たちが自粛をすれば、きっと将来の感染拡大は防げる」という「有意味感」。二つ目は「取りあえずゴールデンウイークまで自宅待機しよう」など時系列や全体を見通す「全体把握感」、三つ目は「インフルエンザで1週間休んだことがある。これ以上休んだ経験がないから、専門家に聞いてみよう」など成功体験があり、助けの必要性を感じたときに早急に援助を求めることができる「経験的処理可能感」だ。

 「人は主体的に行動している時はストレスを感じることは少ない。逆に他人からやらされていると考えるとストレスを感じる。自粛の意味を理解し、主体的に行ってほしい」

 県内の電話相談には新型コロナウイルス感染症への不安を訴える声も相次いでいる。德田医師は、不安への対処として(1)まず立ち止まり、周りを見渡す(2)信頼できる情報を一つだけ持つ(3)行動する―の三つを挙げる。

 インターネットやSNSでウイルスの情報を集めすぎて不安に陥っている人が多い。それにまず気付くのが大事だという。信頼できる情報を繰り返し読み理解することで、頭の中でウイルスに関するイメージができて見えないものが見えるようになり、不安が解消できるようになる。

 「不安は雪だるまと一緒で、転がせば転がすほどどんどん大きくなっていく。心が不安になったら、体を動かすこと、行動すること。厚生労働省の情報を基に今できることをやり、手洗いをして、換気が大切なら窓を開けよう」

~新型コロナ禍で心の健康を保つヒント~

自粛中は快適な環境を整える

自粛の意味を理解し主体的に行う

不安が強い人はインターネットやSNSなどから情報を集めすぎない

厚生労働省などの情報を正しく認識し行動しよう

 とくだ・つよし 1969年、うるま市出身。95年に琉球大学医学部を卒業後、精神科医として同大病院・国立療養所琉球病院・県立精和病院などに勤務。現在はとくだ心療内科の院長。専門は産業精神医学。ユーチューブに心の健康に関する情報を配信している。