贈答用の高級果実として全国で沖縄ブランドを築いてきた県産マンゴー、パイン。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することで今夏の販売低迷が危惧されている。連休明けから本格化する出荷準備に向かっている農家は先行きに不安を抱えつつ、「沖縄のいい物を沖縄の人に消費してもらえれば」と語った。
亜熱帯の温暖な気候で自然栽培ができる沖縄は、マンゴーとパインを自然栽培できる北限に位置し、国内シェア1位となっている。パインは大型連休明けに出荷の最盛期を迎え、マンゴーは中元需要と重なる7月に最盛期を迎える。
缶詰加工原料として発展してきたパインは、近年は甘みの強いゴールドバレル品種の開発など付加価値を高める取り組みが進み、高価格の生食用の出荷が増えている。
マンゴーは宮崎県などとの産地間競争が激しい。JAおきなわ営農販売部の平安山英克部長は「県産は果肉の食べ応えと糖度と酸味のバランスがいい。熱帯果樹特有のおいしさは、どこにも負けない」と強調する。
沖縄産のフルーツは贈答用の引き合いや観光客の人気が高く、県外では1玉数千円台で販売されることも多い。だが、新型コロナの影響で高級品を中心に消費が低迷しており、県産果実も販売量の低下や単価の下落が予想される。
船の輸送日数を考慮して、熟す前に収穫される外国産と違い、県産マンゴーとパインは熟した甘い状態で市場に出回る。完熟で収穫し、航空便で全国に届けるという鮮度が県産果実のブランド価値を高めてきた。平安山部長は「なんと言っても完熟を収穫できるのが県産品の最大のメリットだ」と話す。
だが、新型コロナの影響を受けた航空各社の運休・減便で物流に制約が生じており、県外発送に支障を来すことも懸念されている。
マンゴーやパインを生産する仲間農園(宜野座村)は、通販で県外に販売することが多い。同園の景光正明さんは「県外にはクール便で発送するが、今後、物流がどうなるか心配だ。観光客需要のある道の駅も、新型コロナで休業している」と表情を曇らせる。
県外への流通が停滞していることから、JAおきなわはマンゴーの県内販売を強化する。県外よりも一足早い4月末から県内で注文を受け始めている。一方で、商業施設などでの販促活動も開催が不透明になっているなど、県内でも消費者にアピールする機会が限られる状況がある。
景光さんは6月の収穫に向けてマンゴーの実を丹精込めて育てる。「食べた人が幸せな気持ちになれるような食材を提供したい。(農家同士で)力を合わせて乗り越えたい」と語った。
(石井恵理菜)