イージス案断念 政府の安保政策、秋田と沖縄で違い鮮明


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、防衛省が「唯一の適地」とした陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を断念する方針を固めた。候補地選定でのずさんな調査が明らかになり、地元の理解が得られないことが大きく響いた。一方、名護市辺野古の新基地建設で同省は一連の選挙結果を顧みず、軟弱地盤の判明後も「唯一の解決策」として工事に突き進んでいる。沖縄と秋田で、地元理解への政府の対応の違いは鮮明だ。

 防衛省は昨年5月、青森、秋田、山形の東北3県20カ所を検討した結果、新屋演習場を東日本で「唯一の適地」と結論付けた。だが地元紙の秋田魁新報の報道で、測量がずさんだったことなどが判明。再調査を余儀なくされた。

 直後の7月の参院選では、秋田選挙区で新屋配備に反対する候補が自民党現職を破った。沖縄選挙区でも辺野古新基地反対を掲げる候補が当選したが、その後、政府は秋田のイージス配備については「ゼロベース」と繰り返す一方、辺野古の問題では有識者会議を設置し、軟弱地盤改良に入る準備を着々と進めた。

 イージス・アショアの再調査期限はことし3月20日までだったが、新型コロナウイルス感染拡大などを理由に5月末まで先送りされている。この間、防衛省は4月21日に辺野古の軟弱地盤改良に伴う設計変更を県に申請した。県が新型コロナ対応に追われるさなかだったが、河野太郎防衛相は「書類の提出ですから、あまりコロナとは関係ないのではないか」と語った。

 自衛隊(イージス・アショア)と米軍(新基地)の違いはあるものの、国の安全保障政策の現行方針に地元が反発する構図は共通する。秋田県の佐竹敬久知事は「新屋では理解は得られない」と強調し、玉城デニー知事は辺野古の設計変更に応じる見通しがない。政府は安全保障は国の専権事項と主張するが、地元の理解なしに政策を進めるのは困難だ。