辺野古軟弱地盤 国は調べず申請「後出しじゃんけん」か 97年に可能性示唆


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、政府は1997年7~10月に大浦湾で調査を実施した。業者が作った地層断面図では深く落ち込んでいる谷地形があり、一般に軟弱とされる「沖積層(ちゅうせきそう)」が水面下約90メートルに達している様が確認できる。政府はその3年後の第3回代替施設協議会で、地元側への説明資料として同様の地層断面図を提示した。

沖縄防衛局の受注業者が作成した推定地層断面図。黄色い層が沖積層

■「後出し」

 沖積層とは約2万年前の氷河期の後に堆積した新しい地層だ。それ以前に形成された地層は氷河期を経て締め固められているが、沖積層は氷河期を経過していないため固結しておらず水分を多く含む。

 地盤工学の鎌尾彰司日本大准教授は「沖積層は一般に軟弱地盤を示し、砂地盤では液状化、粘土地盤では圧密沈下の恐れがある。詳しく調査して状況を確認すべきだった。少なくとも埋め立て承認願書の時点で(軟弱地盤の)可能性は示しておくべきだったのではないか」と疑問を呈する。

 別の専門家(地盤工学)は「必ずしも沖積層が軟弱地盤とは限らない。ケース・バイ・ケースだ」としつつ「軟弱である可能性がないとも言えない。きちんと地層が堆積した歴史を把握しておくことは大事だ」と述べた。

 沖縄防衛局は「埋め立て承認申請中に『その後の施工段階で土質調査などを追加する予定』と県にも伝え、その上で承認を頂いた」と説明した。2013年の埋め立て承認後に追加でボーリング調査をした結果、軟弱地盤が見つかったという。

 埋め立て承認申請の際に軟弱地盤の存在を示さなかったことについて落ち度はなかったとの立場だ。だが、承認申請に当たって実施し反映させた掘削調査は辺野古側4カ所で、大浦湾側の調査はしていない。

 鎌尾准教授は「安上がりな工法でいったん承認を得た後でさまざまな要素を追加・変更していく意図があったのではないか。後出しじゃんけんに見える」と語った。実際、軟弱地盤に限らず護岸造成や埋め立てなど個々の工事でも、当初は低い額で落札された後、契約変更で工費が膨らむ場合が多い。

■強度は推定

 防衛局は97年調査で得られた地層断面図の表記を認めた上で「この地点は現行の埋め立て区域の外に位置しており、現在の代替施設の建設場所とは異なる」と強調した。

 だが、97年調査で沖積層が水面下90メートルまで堆積していることが分かった地点の西には、現行計画の埋め立て区域内で最も軟弱地盤が深いとされる地点「B27」がある。承認後の調査で沖積層の粘土層が約90メートルに及ぶことが判明している。

 軟弱地盤を巡る疑義の一つが、B27の強度を力学試験で確かめず、別の3地点の数値を基に地盤強度を推定で済ませていることだ。政府は70メートルより深い地盤は改良していなくていいと結論付けている。

 地質学の立石雅昭新潟大名誉教授は「沖積層であれば、軟弱地盤の可能性が高い。政府はそれを分かった上で、東側の谷地形を避けて埋め立てる計画にしたのだろう」と指摘する。その上で「本来は、現行計画のB27地点にも谷地形があって沖積層が厚く分布し、軟弱地盤の可能性があることを考慮し調査を尽くすべきだった。現状は予測し得た」と強調した。

(明真南斗)

埋め立てや護岸工事が進む辺野古沿岸部。奥の大浦湾一帯は軟弱地盤が存在=2019年2月(小型無人機で撮影)