山之口貘賞の募集延期 コロナ踏まえ日程検討 琉球新報社


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 琉球新報社は本年度の第43回山之口貘賞の募集を延期します。例年4月下旬に詩集を公募していますが、今年は新型コロナウイルスによる感染拡大の影響を考慮し、募集時期・選考会日程などを延期します。新型コロナの感染状況の推移をみながら、新たな日程を紙面・ウェブなどを通してお知らせします。

 この賞は琉球新報創刊85年を記念し、1978年に創設されました。奄美を含めた琉球弧の文学振興の立場から、広い意味で山之口貘の文学を受け継ぐ詩作品ないし詩活動を表彰するもので、この1年間に発表された個人詩集を対象とします。後援は山之口貘記念会、南海日日新聞社。

 長年尽力いただいた前選考委員の天沢退二郎氏は退任、与那覇幹夫氏は1月に逝去しました。本年度の選考委員は詩人の以倉紘平氏(H氏賞、歴程賞、現代詩人賞)に加え、新しい選考委員として詩人の高橋順子氏(読売文学賞、藤村記念歴程賞、三好達治賞)と詩人の市原千佳子氏(丸山豊記念現代詩賞、山之口貘賞)が本年度から加わります。

 山之口貘賞の応募資格は沖縄・奄美在住者および出身者。自薦・他薦は問いません。応募に当たっては詩集4部と必要事項を記した紙を琉球新報社に郵送します。選考会を経て受賞者に賞状、賞金10万円を副賞を贈ります。

 新選考委員に高橋順子氏と市原千佳子氏

高橋順子氏

 沖縄出身の詩人、山之口貘の文学を受け継ぐ詩作品や詩活動を表彰する「山之口貘賞」の新しい選考委員に詩人の高橋順子氏(75)と詩人の市原千佳子氏(69)が就任した。本年度の山之口貘賞から担当する。

 高橋さんは1944年千葉県生まれ。出版社に勤務しながら第一詩集『海まで』を刊行。著書に詩集『時の雨』(読売文学賞)、『海へ』(藤村記念歴程賞、三好達治賞)、『さくら さくらん』、エッセイ集『一茶の連句』『夫・車谷長吉』(講談社エッセイ賞)など。

市原千佳子氏

 「若いころから私は山之口貘の詩に宿る光と気骨とユーモアに感じ入っていました。稀有(けう)な素晴らしい詩人『貘さん』につながる沖縄の詩人たちのことばに接することができるのは、うれしい限りです」と抱負を伝えた。

 市原さんは1951年生まれ、宮古島市の池間島出身。詩集『海のトンネル』で第8回山之口貘賞受賞。詩集「月しるべ」で丸山豊記念現代詩賞を受賞。エッセー「詩と酒に交われば」で平良好児賞。19年度まで神のバトン賞選考委員。そのほか、タイムス芸術選賞奨励賞。

 市原さんは「詩する者は、森羅万象に弟子入りして、感性と言葉との間の、作用・反作用の力に苦楽する。その大きさは運動の法則を超える。選するおこがましさが許されていいのは、詩への愛だけでありたい」と決意を示した。