今年1月22日に浦添市内で開催された赤嶺昇県議の政治資金パーティーについて、赤嶺氏を支援する古波蔵保尚浦添市議が「支払済」と押印されたパーティー券を無料で配布していた疑いがあることが13日、琉球新報の取材で分かった。古波蔵氏は事実関係を否定したが、本紙の取材では8人が券を受け取った。その際、現金を支払った者はいない。
価格は1枚5千円で、選挙区内の有権者に無料で配布する行為は公選法に抵触する可能性がある。識者は「選挙のことを述べて無料で配る行為は選挙期間中の買収ではないが、事実上の買収に近い」と指摘した。
古波蔵氏は4月28日の本紙の取材に対し、「全然知らない人に配りまくってはいない」と述べていた。その後、13日の取材には「支払い済みのチケットをお金を受け取らずに渡した事実はない」との認識を示した。
本紙は、古波蔵氏から実際に「支払済」と押印されたパーティー券を無料で受け取ったという複数の関係者から証言を得た。関係者によると、1月18日夜、浦添市内の居酒屋で知人らで飲食中、別席で飲食していた古波蔵氏があいさつに訪れたという。古波蔵氏は今月29日に告示される県議選を念頭に「6月に選挙がある」などと述べ、同席した8人にパーティー券を無料で配布し、受け取った人は誰も5千円を支払わなかった。古波蔵氏の説明と事実関係に食い違いが生じている。
赤嶺氏は「市議がどのようにパーティー券を取り扱っていたかは分からない」とした上で「当時は県議選への立候補はまだ決まってもいなかった。パーティーでも選挙の話は一切していない」と説明した。
(当間詩朗、高辻浩之)
◇利益供与か
岩井奉信日本大教授(政治学)の話 1枚5千円のチケットを無料で配ったとなれば、形的に利益供与に当たるのではないか。かつ選挙のことを言っていると買収の約束に当たる。選挙期間中の買収ではないが、事実上の買収に近く公職選挙法に抵触する恐れがある。政治資金パーティーは飲食が主体ではなく資金集めが目的だ。選挙があると言って5千円の価値があるものを配ることは、利益供与とみなされても仕方がない。
パーティーに行くか、実際に投票するかは受け取った本人の自由だが、無料で配った時点で買収の申し込みに当たる。選挙区で配れば特定多数も不特定多数も関係ない。特定多数の場合、理由として挙げられるのは後援会の人に無料で配ったなどだ。後援会の人は後援会費を払っているから対価だという認識だ。しかし、会員ではない人に配る行為は不特定多数に配ることと同じで、公選法違反の可能性が高くなる。
◇金銭授受が基準
郷原信郎氏(弁護士、元検察官)の話 料金支払い済みとされるパーティー券を政治家が選挙区内の有権者に配る行為が、公職選挙法で禁じられた買収行為に当たるかどうかを判断する場合、判断基準は二つある。
一つ目は、パーティーの中身。主目的が人集めで、集まりの際に飲食物の提供が形式的で、量がごくわずかで内容も乏しいものであった場合には悪質性が低いとされ、利益供与には問いにくくなる。
ただ、会場でそれなりの食事や飲み物が用意されていた場合、「飲食物の提供を受ける権利」を有権者に無償提供したことになり、より悪質性が増し、公選法の利益供与に当たる可能性が出てくる。
二つ目は、企業側と主催者側で金銭の授受があったかどうか。パーティー券の代金を実際に企業側が主催者に支払っていたとなれば、買収行為に抵触することになる。