新型コロナ 本紙県民生活調査詳報(2)孤立する弱者、浮き彫り


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 新型コロナウイルス感染症拡大後の県民生活の変化を聞くため、琉球新報は沖縄大学地域研究所の協力を得てアンケート調査を実施した。有効回答は2393件。

<相談状況>「できる」半数満たず

 悩みごとや困りごとがあったとき、誰かに相談できるか聞く項目では「相談できる」とした人は47・9%で半数に満たなかった。「相談できる相手はいるが、相談しづらい、または解決を期待できない」が29・5%と3人に1人に上った。「相談できる相手が思い当たらない」「他人に相談しない、またはしたくない」を合わせると、5割が相談をしないか、できないと答えた。

 相談しない・できないとした人の中には、所得が激減した人や心理状態の良くない人も多数いた。

<家賃>自営業「払えず」半数

 「近い将来そうなりそう」という予測を含めて「あなたや、あなたの家族が困っていること」として「家賃や住宅ローンを払えない」を選んだ人は全体の3割近くいた。自営業ではこれを選んだ人が46・7%で突出して多かった。2番目の非正規職員は29・3%、会社役員が27・7%と続いた。

 年代別では20代~50代はいずれも25%前後、所得別では低所得から高所得まですべて20%台で大差なかった。「家賃」には店舗や事務所も含まれ、規模が大きな事業所も家賃の支払いに苦しむ様子が見える。

<回答者の属性>回答者9割が勤労世代

 回答者の居住地は98・1%が県内だった。「県外の国内」が1・5%いて、自由記述に「沖縄に帰れない」と答えるなど、県出身者が一定数はいるとみられた。

 性別は68・8%が女性で、男性が30・5%、その他が0・5%だった。年代は30代が30・7%、40代が34・9%と多かった。20代、50代は10%台で、勤労世代の20~50代が合わせて9割を占めた。

 職業は正規職員が39・2%と最多で、非正規職員が32・5%、自営業が11・4%と続いた。職種は医療・福祉が最多の15・3%、サービス業が12・9%、宿泊・飲食業が11・5%と続いた。県内に多い建設業の回答が少なかった。

 コロナ禍の影響が出る前の「あなたの1カ月の手取り所得」について「10万円未満」「10~15万円」「15~20万円」が、それぞれ約2割を占めた。職業や所得は県内の状況をおおむね反映していた。

「個」保障する仕組みを/調査協力・沖大の提言

 食料の購入と家賃の支払いでは困難に面している層が異なる。それぞれへの対応が必要だが、政府の施策は後手後手で、相談窓口の担当者もどう答えていいか分からないこともあるだろう。ただ県民の心理状態は深刻で、不安を解消する慎重な対応が不可欠だ。

 現行制度でも小口資金、総合支援資金、住宅確保給付金の三つを活用すれば数カ月は何とかしのげる。大混雑する窓口の増員に加えて、相談者をたらい回しにしないよう、多数ある制度の担当者が1カ所に集まるワンストップ窓口も必要だ。

 現在は企業を介した給付が多いが、それだけではこぼれ落ちる人がおり、すべての人に生きるための最低限の保障はできない。ベーシックインカムのような個を保障する新たな仕組みを作るしかない。

 ■調査協力 沖縄大学地域研究所 島村聡所長、山野良一副所長、島袋隆志副所長

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<調査の方法>  

調査は4月28日~5月6日に実施した。個人の所得や勤務時間の変化、生活上の困りごとや必要なもの、心理状態などをインターネット上のアンケートフォームで答えてもらった。琉球新報の記事や公式SNSで広く一般県民に回答を呼び掛けたほか、食料支援を行う「おきなわこども未来ランチサポート」の関係者を通して利用者にも回答を呼び掛けた。任意で2456件の回答があり、有効回答は2393件だった。

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<主な質問>  

 ■新型コロナウイルス感染症の影響が出る前、あなたの1カ月の手取り所得額はいくらでしたか  

 ■新型コロナウイルス感染症の流行前に比べて、あなたの1カ月の手取りの所得額は変わりましたか。もしくは、これから変わりそうですか

 ■新型コロナウイルス感染症の影響で、あなたの働く日数や時間は変わりましたか

 ■あなたやあなたの家族は今、どのようなことに困っていますか。「近い将来、そうなりそうだ」というものでもかまいません▽悩みごとや困りごとがあったとき、誰かに相談できますか

 ■あなたやあなたの家族にとって、いまとても必要なものは何ですか

 ■あなたの心の状態について、過去30日の間にどれくらいの頻度で次のことがありましたか。

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