1988年のソウル以来8大会ぶりの五輪出場となるハンドボール男子「彗星ジャパン」。挑戦の大舞台の延期について、司令塔を任される東江雄斗(26歳、興南高―早稲田大出、大同特殊鋼)は慌てることなく世界の強豪国に迫る期間と捉える。「メンタル、フィジカル、技術全てを磨き上げたい」と決意を新たに試合を勝ち抜く目標を見定める。
日本リーグ男子で最多優勝を誇る強豪で中心選手として活躍する。昨季は新型コロナウイルスの影響でリーグは最終盤に中止となったが、2度目となる年間最優秀選手賞など4部門でタイトルを取った。
代表戦では1月のアジア選手権で東京五輪にも出場するバーレーンに2連勝するなど銅メダルを獲得した。チームとして成熟度の確認の狙いもあった大会について「試合終盤の勝負どころで冷静に対応できた。個人的にも大事な場面で得点につなげるプレーができた」と評価した。自身はMVPに選ばれ、中心選手の地位を確固たるものにしつつある。
一方で準決勝の韓国戦はけがの影響で思うようなプレーができなかった。前の試合で利き腕側の右脇腹を肉離れで痛め、集中力が続かず判断を誤るなどし苦杯をなめた。強豪国の選手との違いはフィジカルにあると分析する。実際にフィジカル強化で年々、国際試合で太刀打ちできるようになってきた実感がある。フィジカル強化の課題をより明確に捉えている。
五輪の延期決定がなければ、3月中旬から海外遠征など強化合宿がぶっ通しで組まれる予定だった。現在も緊急事態宣言による活動自粛でグループ練習さえできていない。寮内にある設備で筋力強化やランニングなど基礎的なトレーニングに集中しているが、1カ月以上もまともにボールを投げられない状況に「感覚が鈍らないか、肩回りの柔軟性が衰えないか不安はある」と戸惑いは隠せない。それでも延期によって「さらにレベルアップできる時間が増えた」と前向きに気持ちを切り替える。
技術や精神面の向上も図りつつ「ハンドをいろんな人に見せられるチャンスが増えたと思い、過程を楽しみたい」と頼もしい。代表選考に向けては「他の選手も死にものぐるいで狙ってくる。同じ気持ちでやっていく」と緩みはない。爆発的なスピードを生み出すフィジカルの強さが強豪国のゴールを射抜く。理想型に近づけるため、さらに心身を研ぎ澄ませる1年になる。
(謝花史哲)