【北部】農林水産省の2019年の調べで、ミツバチの飼育数で沖縄県が日本一になった。県内ではハチミツ用ではなく、ビニールハウス内で果物を育てる際に使う花粉交配(ポリネーション)用のミツバチの生産が盛んになっている。冬でも温暖な沖縄の気候がミツバチの繁殖に適し、花粉交配用に県外へと出荷されている。関係者は「日本の農業は沖縄のハチが支えている」と胸を張る。
昨年1月時点の都道府県別の飼育状況調査で、沖縄の蜂群(ほうぐん)数が約1万4700群となり、長野の約1万3300群を抜いて初めて1位になった。蜂群は女王バチ1匹が引き連れる集団の単位で、1群はミツバチ約5千~1万匹に相当する。
県外では冬場にミツバチの繁殖が止まるが、温暖な沖縄では年間を通して繁殖する。ミツバチは屋外に設置した巣箱で育てるために県外ではクマによる獣害も無視できないが、沖縄はその心配もない。
県内では生産者も増加傾向にある。県のまとめでは2010年の県内生産者は71人だったが、19年は196人と10年で約2.7倍になっている。県農林水産部の担当者は「初期投資が比較的少なく、冬期でも収入源になると始める人が多い」と説明する。
県外向けのミツバチ出荷は、養蜂業大手のアピ(本社・岐阜県)などが手掛けている。名護市に拠点を置く、同社ミツバチ沖縄生産管理センターの野口正男センター長は「沖縄産のハチは他県産より長期にわたってよく働くのが特徴だ」と語る。同社は18年9月から19年5月の間に、約1万4千群を沖縄から県外に出荷した。同社は1群を8千~1万匹としている。
アピを通じてミツバチを出荷している農家は、本島北部を中心に約50軒を数える。大宜味村で約600群を飼育する山口進さんは、果樹栽培の傍ら、数年前から花粉交配用のハチ生産に取り組むようになった。農業生産法人を設立し、4人でハチの管理を続ける。
農園内の巣箱からハチが飛び立ち、野山からシークヮーサーやセンダンの花粉を集めてくる。それに加えて、各巣箱に週1回程度砂糖水などの餌も与えてミツバチを育てている。
山口さんは「ミツバチは沖縄の新たな産業になるかもしれない。若い人を(養蜂に)定着させたい」と目標を語った。
(塚崎昇平)