車いすマラソンの喜納翼 「次に向けてやるしかない」 心乱さず、理想を追求【Reスタート・8】


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拠点とする屋内練習場で、ローラーを使ってレーサーをこぐ喜納翼=4月28日、本島中部(下地隆之コーチ提供)

 女子車いすマラソンT34/53/54クラスの日本記録保持者である喜納翼(29)=タイヤランド沖縄=は東京パラリンピックの延期が決まっても、一切心が乱れることはない。レベルのさらなる向上へ「決まったからには次に向けてやるしかない。今までの課題を改善するため、目の前のトレーニングをひたすら続ける」と気を引き締める。競技を始めて7年目。短期間で国内トップにまで駆け上がった日本のエースに舞い込んだ貴重な1年。伸びしろはまだまだ十分だ。

 3月中旬、代表選考を兼ねた4月のワールドカップ(ロンドン・マラソン)が新型コロナウイルスの感染拡大で10月に延期が決定した。選考過程が不透明さを増す中、「(東京パラの)中止もあり得るのかな」と最悪のシナリオが脳裏をよぎった。それだけに延期の一報には不安より安心感が勝った。自身も認める楽観的な性格。「こういう時は落ち込んでも仕方ない。車いす生活になった時もほとんど落ち込まなかったので」と笑い飛ばす。

 コロナ禍で県内の陸上競技場が閉鎖していたことには「幸いにもそこまで練習に影響はない」という。週5~6日、1日2~3時間、沖縄本島中部の屋内練習場で、ローラーの上でレーサー(競技用車いす)をこぐ練習や腹筋、背筋など上半身の筋力強化に汗を流す。今年初めからパーソナルトレーニングも取り入れ、理想の体を追求している。技術面では「体の使い方や車輪への力の伝え方がまだまだ。いい感覚がつかめていない」と納得していない。上り坂の走り方やカーブを抜けた後の立ち上がりの加速を課題に挙げ、空いた期間に「ひたすら走り込んで体にいい感覚を覚えさせるしかない」と地道な進歩を思い描く。

 下地隆之コーチも延期について「悪い影響は全くない。持久力、スピード、パワー、全てにおいてレベルアップできる」と断言する。実際に昨年11月の大分国際車いすマラソンでたたき出した日本記録の1時間35分50秒は予想タイムを上回る好記録で、周囲を驚かせた。鍛錬によりさらなる更新を見込んでいる。

 期待を背負う中で現時点の目標について「具体的な数字は設定していない」と控えめながらも「確実にタイムを縮めていきたい」と意気込む。ギアを緩めることなく、世界最高峰の舞台へ突き進む。

(長嶺真輝)
(おわり)