新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う渡航制限や県をまたいだ移動の自粛が続き、観光産業は依然厳しい状況が続く。旅行業大手のJTB沖縄の杉本健次社長は、感染が第1波で収束した場合の想定として、2020年度の入域観光客数は前年比50%減の473万4600人と見込み、観光消費額は3358億6722万円のマイナスが出ると試算した。今後の見通しや必要な対策について聞いた。
―観光影響を試算した結果をどう見るか。
「JTB沖縄の実績や航空、ホテル関係者への聞き取りを加味して試算した。第2波、第3波が来た場合にはさらに大きな影響が出る。県が試算している経済波及効果は、観光収入の1・5倍ほどだ。そうなると約5千億円近い打撃がある。観光客の減少がどれだけ県経済に影響を与えるかしっかり認識しておく必要がある」
―実際にどういう状況が起きてくるか。
「観光関連を中心にその他の産業でも廃業や倒産が出てくるだろう。潮目が変わり観光客が来るようになった時には、もう担い手がいないという状況も起こり得る。国や県による継続的な経済支援は欠かせない。観光産業の体力もぎりぎりの状態だ」
―回復の見通しは。
「第2波が起きれば見通しは全く変わるが、第1波で収束する前提だと2021年度以降は回復してくるだろう。当面は県内需要が中心になる。(経済的な)ダメージを比較的に受けていない組織の人などに観光施設を利用してもらう取り組みも必要だろう」
「外国人客はしばらく時間がかかる。台湾や韓国など、感染を抑え込んでいる地域と交流をスタートさせるのも方法の一つだ。ウェブアンケートを見ると、台湾や韓国では収束後に日本に行きたいというニーズが高まっている」
―感染防止対策を取る中で観光の形態も変わってくる。
「沖縄観光はどこも混雑していたが、アフターコロナの世界では課題となる。ソーシャルディスタンスを保ちながら飛行機やホテル、旅行社でどれだけの人数が受け入れ可能か今からでも検証する必要がある」
―感染防止のために人数を制限すれば、その分収益も制限されてくる。
「1人当たりの消費単価を上げないといけない。沖縄観光の量から質への転換を進める良いチャンスだ。単価を上げるには1人当たりの滞在日数を増やすことだ。長期滞在向けのコンテンツや過ごし方の提案が必要となる。企業の在宅勤務は今後も続く。リゾート地で仕事をするワーケーション(『ワーク』と『バケーション』を組み合わせた造語)も長期滞在型として注目している」
「『観光客は市民生活を脅かすもの』という県民感情が出てこないかを危惧している。観光客は沖縄の基幹産業に欠かせないという意識を持ち続ける必要がある」
(聞き手 中村優希)