休校、休業で困窮者増 子の権利救済急務 行政、学校は聞き取りを


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ももやま子ども食堂に通い、食事を取る子どもたち=12日、沖縄市

 この春、沖縄市の「NPOももやま子ども食堂」は普段よりも静かだった。新型コロナウイルス対策のため、4月から人数を絞って子どもを受け入れてきたからだ。

 感染拡大で休校が長期化し、外出自粛が呼び掛けられると、街中で見掛ける子どもも少なくなった。生活困窮世帯などの救済策の一つとして、学習支援や食事を提供する「子どもの居場所」は近年急増したが、コロナ禍で一時取りやめも相次いだ。「しんどいときほど助けを求めにくい」。関係者らは、支援を必要とする子どもの声が届きにくくなっていると懸念した。

 高校生のりんさんと中学3年の小春さん、同1年のカイさん=ともに仮名=のきょうだいは、ももやまに週2回訪れる。勉強したり、食卓を囲んで談笑したりして、自由な時間を過ごす。

 りんさんの悩みはアルバイトの出勤日数が少なくなり、減収したことだ。休校に伴い中学生2人の給食がなくなり、その分の食費がかさむようにもなった。「お米も買えなくなり、お腹は余計に減った」。1日分の食費を調整し、朝ご飯を抜くようになった。母親が働く就労支援の事業所も休業となり、収入源が途絶えた。

 妹の小春さんは学校再開について「友達もいないし先生も嫌い。学校に行くと息が詰まる。始まらなくていい」と語った。休校中、学校側と連絡はほとんど取っていない。「ももやまが落ち着く」。りんさんとカイさんも同意した。

 ももやまの主任・菅原耕太さん(38)が指摘した。「子どもの居場所ができた後も、貧困はなくならない。社会は根本的に変わっていないことを新型コロナが明らかにした」

 内閣府の「沖縄子供の貧困緊急対策事業」が2016年度から始まり、子どもの居場所づくりの機運が高まった。県によると、昨年10月1日時点で約200カ所に上る。県も30億円の子どもの貧困対策推進基金を作り、就学援助などに取り組む。

 一方、コロナ禍で支援者も各家庭の実態把握に苦慮している。菅原さんは「行政や学校は声を待つだけでなく、聞き取る姿勢が大切だ」と強調した。

 県議会は3月、子どもの権利を尊重する県の条例(子どもの権利条例)を全会一致で可決した。条例は4月1日に施行した。子どもの権利の普及啓発を図り、児童を虐待から守る施策を進める。条例は県や県民、市町村、学校などの関係機関に施策の実施などを義務付けた。16年、県議会は「県議会子どもの未来応援特別委員会」を設置し、貧困対策も議論してきた。

 コロナ禍では、家庭内暴力の増加への懸念もある。NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいの金城隆一代表理事は「親は仕事を失う不安を抱え、子も休校でストレスを感じている。心身ともに不安定な状態が続いている」と警鐘を鳴らした。県子どもの権利条例について、子どもの実態反映が不足していると疑問視し、実効性の確保を求める。

 県議選は5月29日告示、6月7日投開票され、立候補予定者の約8割は子育てや教育分野を重要政策に掲げる。新型コロナは貧困の問題の根深さを改めて浮き彫りにした。金城代表理事は願う。「全ての子どもを社会全体が守ることを原点として、県民の代表である県議は行政を動かしてほしい」
 (’20県議選取材班)