【宮古島】毎朝、決まった時間になると決まった音楽と一緒に街中を駆け巡る家庭ごみ収集車。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、休業や自粛が推奨される社会で、清掃業者は一日も休むことなくごみを回収し続けている。「感染リスクや家族のことを考えると怖い。でも休むわけにはいかない」。社会生活の基盤を守ってきた人々の矜持(きょうじ)が、コロナ禍での市民のステイホームを支える。
11日早朝、宮古島市内を走る収集車にはマスクにサングラス、ゴム手袋姿の作業員2人が乗っていた。運転と収集、役割分担して次々とごみを回収する。大通りから外れ、脇道に入ったかと思うと引き返し、また別の脇道へ入る。
宮古環境清掃の与那覇康弘さん(46)は「ルートはクモの巣のように複雑。無駄なく全世帯のごみを回収できる順番がある。一朝一夕ではできません」と笑う。
ルートだけではない。宮古島市では家庭ごみを可燃と資源、粗大、枝葉と四つに分別している。作業員は目と手、経験から来る勘で袋の中身を確かめる。その間、1秒もかからない。
29業者が請け負い、約30台の回収車両が曜日ごとに市内を走る。
可燃ごみを収集する下地和幸さん(40)は「汚いし危険で、ごみを運ぶだけと思われるかもしれないが、代えがきかない専門職なんです」と胸を張る。
分別されておらず回収できないことを告げると、なじられることもある。コロナの感染拡大が本格化し、回収するごみ袋の中にマスクがあることも増えた。「家族の顔がふっとよぎる。怖いなとは思うけど、きちんと回収する責任がある」と話す。
「代えがきかない」が故に何があっても休めない。休まない理由は市民への感謝だと与那覇さんは話す。「市は清掃業者の待遇改善に取り組んでいる。委託契約料も本年度から増額した。市民の皆さんの税金。だからありがたいし、私たちは仕事を全うしないといけない」
最近は回収先に飲み物が置いてあったり、マスクを贈られたりすることも増えた。2人は「本当にありがたいし、その思いに応えたい。ごみ回収は任せてください」と笑顔で語った。
(佐野真慈)