再開へ新しい運営を模索 公立文化施設メールで申請<舞台の灯をつなぐ―コロナ渦の先に④>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
窓口業務を電話やファクスなど対面を避けるものに限ることを案内するアイム・ユニバース・てだこホールの看板=7日、浦添市

 全国の自治体が設置した劇場やホールなど約1300館で構成する全国公立文化施設協会(公文協)は3月27日、指定管理者制度を所管する総務省に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、収益が減少している公立文化施設を運営する指定管理者への支援を求める要請をした。

 指定管理者の収入は、主に行政が指定管理者に支払う指定管理料と会館などの利用料からなる。そのため、新型コロナウイルス感染症対策に伴う公演の中止や延期で、チケットの払い戻しや中止になった催しの会場利用料の返金などが重なり、利用料の減収が相次いだ。

 公文協の要請書には、これらの減収分の穴埋めを検討するよう、自治体への通達を求める旨が記された。総務省は要請を受けたその日に、自治体宛に、指定管理者制度の運用の留意点に関する文書を出した。感染拡大防止に向けた対応により生じた施設の減収分について、各地方公共団体と指定管理者との間で結んだ協定などに基づき、適切に対応するよう通知した。

 現在、那覇市の委託でパレット市民劇場と那覇市民ギャラリーを管理する「パレットグループ」、浦添市のアイム・ユニバースてだこホールを管理する「ティダコミュニケーション&リレーションズ」をはじめ、県内の複数の指定管理者がすでに減収分についての協議を自治体と始めている。しかし、100%の穴埋めが約束されているわけではない上、算出が困難な、会場貸し出し時に発生する音響や照明などの付属設備料については補填(ほてん)のあてはない。

 厳しい状況が続く中、政府は5月4日に緊急事態宣言の延長を決めた。県は5日、延長を受けて、県民の社会活動再開への道しるべを示す中で「新しい生活様式」の定着を図るよう呼び掛けた。

 パレット市民劇場は社会情勢を鑑みて、5月末までの休館を決めた。収入の約3割を利用料収入が占めるパレットグループにとって休館は痛手だ。それでも同劇場の担当者は「今は換気の良い空間づくりなど、芸能に携わる方々が安心して発表できる場を今後どう確保していくかを日々考えている」と力を込める。

 てだこホールは、4月17日から、従来は対面で行っていた次年度の施設使用申請を、メールやファクス、郵送で行う取り組みを始めた。利用希望が重なった場合は、職員が代わりにくじを引き、念のため映像も撮影した。5月のゴールデンウイークには例年、バレエコンクールや吹奏楽の演奏会が開かれるが本年度は窓口業務も含めて休止した。

 同ホール総務企画課の山口将紀チーフは「県が活動再開へのロードマップを示したことで、会議室の利用などの活動再開の兆しが見えてきた。ホールの再開は難しいが、このまま収束に向かって進んでいってほしい」と願った。
 (藤村謙吾)