例年4月頃から発表会やコンクールが催され、生徒たちは厳しくストイックなレッスンに打ち込む。5月に、全日本バレエコンクールの出場権をかけた、日本バレエ協会沖縄支部のコンクールが予定されていたが、中止や延期が相次いだ。自粛を余儀なくされている生徒のコンディションや精神面を支えながら、関係者は教室の活動再開に向け模索する。
2月後半からの学校休校を受け、多くのバレエ教室が閉鎖された。県が21日から公立学校の再開を決めたことから、各教室では少人数制のクラス編成や教室、講師配置などの環境を新たに整え、段階的にレッスンに戻れるよう準備を進める。一部の教室で自粛中も自宅でレッスンを受けられるようにと、オンラインのウェブレッスンを催し、画面越しで生徒を指導する。
南条幸子バレエ研究所は3~5日にかけて参加者を募り無料のオンラインレッスンを催した。経験者向けの「クラシックバレエクラス」と、生徒の父母を中心に「大人のためのストレッチクラス」を設けた。一度に最多で54人が参加したクラスもあった。指導にあたったルーマニアのシビウバレエ団所属の安村秀熙(ひでき)さんは、参加者から「リフレッシュできた」と喜ばれウェブレッスンの価値を見いだしたという。
「1年に1回の発表会や年に数回のコンクールのために全てを尽くして練習する。その機会がなくなってしまったら、とてもショックですよね」。安村さん自身も4月初旬にドイツで初めての自主企画公演を予定していたが、状況が一変し緊急帰国した。「身の回りにあるものに目を向け、どんなところに幸せがあるのか、目を向けるだけで幸せになれる要素がある。焦らずに淡々とできることを探したい」
那覇市寄宮の緑間バレエスタジオはオンラインクラスと動画配信クラスを開始した。2月下旬にヨーロッパのバレエ仲間から感染状況を聞き、いち早く配信機材をそろえた。発表会の振り付けを自習するための動画や解説付きのレッスンを配信し、オンラインクラスも着々と進めた。緑間貴子代表は「自粛でバレエから気持ちが遠のいたり、生徒のモチベーションの低下にならないように」と生徒をサポートする。
「バレエも大事だが、会える、触れ合えるという心の交流がいかに大切か」。講師の緑間玲貴(りょうき)さんは「大変な状況を生き残るにはさらに真摯(しんし)に取り組まないといけない。頑張っている姿を見せることは生徒の希望にもなるし、彼らがいるからこそ頑張れることがある」と情熱を灯し続ける。
(田中芳)