【糸満】「めっちゃうれしい。学校へ行くのが待ち遠しかった」。22日、糸満中学校(伊井秀治校長)の入学式では新入生の新垣(しんがき)祥子さん(12)と友人の島袋萊々さん(13)がパリッとアイロンのかかったズボン姿で校門をくぐった。同校は今年3月9日から制服選択制を導入し、性別に関係なく、制服を選べるようになった。新垣さんと島袋さんは緊張した面持ちを見せながらも「小学校の時と同じように楽しく学校に行ける」と期待を寄せた。
双子の妹である新垣さんは姉と異なり幼い頃からスカートをはくのを嫌い、兄のお下がりを着て育った。小学5年の時には兄の影響を受け、ヒップホップダンスに打ち込み、自然とボーイッシュな服装を好んでいった。
小学6年になると、中学生に上がることへの悩みを抱える。私服の小学生とは違い、中学生は制服がある。それも女子はスカート。新垣さんは通っていた糸満南小学校の担任に悩みを打ち明け、両親にも相談した。「スカートをはくなら中学校へは行かない」。自分らしい姿で学校生活を送りたいと強い思いを伝えた。
新垣さんの父・哲也さん(45)は「スカートをはきたくないと聞いた時、不思議な感じはしなかった」という。でも「スカートははかなくてもいいから学校だけは行ってほしい」と伝えた。
糸満南小と糸満中の教職員は新垣さんや両親と一緒に話し合いを重ね、制服選択制を導入することを決めた。「(選択制が決まった時は)とびきりうれしかった。萊々と一緒に喜び、ほかの友達も良かったねと言ってもらえた」。小学6年の時の担当教諭は「かつて制服で悩み苦しんだ方の話を聞き、衝撃を受けた。子どもたちの個性を尊重する教育を祥子さんや萊々さんと接して改めて感じた」と語る。
制服選択制の導入後、糸満中学校では在校生3人がズボンをはいて登校した。哲也さんは「同じ悩みを抱える子どもたちやLGBTQの子どもたち、保護者、先生方に少しでも希望となれば」と期待する。新垣さんも「自分だけで悩み続けるのではなく、信頼できる人に相談することが大事」と伝えた。