【記者解説】農水省の「決め打ち」地方自治の危機はらむ 辺野古サンゴ移植係争委


この記事を書いた人 Avatar photo 嶋野 雅明

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けたサンゴ類の移植許可を巡る、総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会(係争委)の審査は二つの意味で重要だ。1点目は係争委の結果やその後の裁判が辺野古新基地建設の進展を左右することだ。国の主張通り沖縄防衛局のサンゴ類移植が認められれば新基地建設の加速につながる。逆に県が勝てば建設を進めたい国にとって障害となる。

 2点目は地方自治の在り方に関わる問題だ。県が長らく判断を示さないのが問題なら、農林水産省が勧告・指示する際、単に県の審査を急がせるという選択肢もあった。だが防衛局の説明に基づいて審査結果を決め打ちし「移植を許可するように」と要求してきた。許可権限を有する県が可否を示さないうちに、国の機関が審査内容にまで踏み込んだことになる。

 今回の農水省による関与の手法が許されれば、今後、地方自治体の事務でも中央の意向を色濃く反映させることが可能となる。陳述に臨んだ玉城デニー知事は国の手法を「異常」という言葉を2度も使って批判した。地方自治の観点から危機感を強調する狙いがある。

 係争委は6月末までに検討結果を示す。県と国のどちらに有利な結果が出たとしても、双方譲れない闘いだけに、裁判へ発展する可能性が高い。 (明真南斗)