コロナ禍「平和」どうつなぐ 各施設模索、ネットも活用


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 沖縄戦の終結から75年。新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きな節目の年を直撃した。沖縄戦の記憶を今に伝える施設も団体予約のキャンセルや休館で入館者が大幅に減った。関係者は頭を抱えながらも、感染症対策を講じたり、「新しい生活様式」に合わせた手法で継承を模索したりするなど、試行錯誤している。

新型コロナウイルスの対策で入館者に注意を呼び掛ける張り紙=21日、糸満市の県平和祈念資料館

 本紙の調べでは、ひめゆり平和祈念資料館、県平和祈念資料館、対馬丸記念館の3施設で3~6月を中心に修学旅行や平和学習の団体予約が少なくとも290件キャンセルとなった。修学旅行は例年10~12月がピークで、次いで4~6月が多い。新型コロナはこの時期を直撃した。

 5月末まで休館するひめゆり平和祈念資料館の前泊克美学芸員は「語り部は高齢者が多く、再開の判断は難しい」と語る。沖縄戦の記憶の継承、平和教育の必要性も理解しているが、元学徒や入館者の安全対策も避けて通れない。

 再開した県平和祈念資料館と対馬丸記念館は入り口に手指消毒液、受付にビニール幕を設置するなど対策を講じているが、人出はコロナ前とはほど遠い。

 対馬丸記念館の6月の団体予約表は半分ほどがそのままだが、残りは二重線で消されていた。同館の宇根一磨学芸員は「教員向け研修もキャンセルになった。寂しい」と声を落とした。

 県内を含め全国各地で緊急事態宣言が解除され、多くの人がこれまでの生活を取り戻そうと動き出している。ただ、学校は再開したばかりで資料館や記念館から足は遠のいたままだ。

 その中で、県平和祈念資料館の大嶺拡学芸班長は来館利用だけでなく、同館ホームページの活用も呼び掛ける。沖縄戦の概要や証言集などがあり、インターネットなどを活用した政府が掲げる「新しい生活様式」にも合致する。

 沖縄戦の記憶の継承、平和教育の重要さや難しさを認識している各施設。感染症という新たな難題にも直面している。