新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言は、北海道と首都圏が25日で解除となり、全都道府県への宣言が終了した。県をまたぐ移動自粛についても6月19日以降は制限がなくなり、観光客受け入れ再開に向けた道筋が見えてきた。県内の観光関係者からはウイルスの移入を防ぐために徹底した水際対策を求める声が上がった。
県は、観光関係者とともに、観光業界全体で統一した行動指針を6月5日にも取りまとめる予定だ。
沖縄ツーリストの東良和会長は、県主導で安全安心な観光地を目指すべきだとして「これでもかというぐらいの安全対策を取り、世界有数の検査態勢をつくる必要がある」と強調した。県外からの観光客の受け入れが始まるまでに検査態勢の強化や、陽性者が出た時に混乱を起こさないための観光現場と医療機関の連携など、早急に体制を整えることを求めた。
県ホテル協会の平良朝敬会長は、航空機の減便やソーシャルディスタンスを保つため提供座席数も減ることから、緊急事態宣言の解除後も観光客はすぐには増えないと指摘する。「空港と港の検疫を徹底的にやり、安心の担保を県が打ち出すことだ」と語り、沖縄に入ってくる人全員にウイルスの有無を調べる検査を実施し、陽性になれば県内のホテルなどで隔離するなどの水際対策に向け、県に強いリーダーシップを求めた。
石垣市と竹富町、与那国町は6月1日から県外観光客の受け入れを再開する方針で準備を進めている。同日に営業を再開する石垣シーサイドホテルは、レストランのビュッフェスタイルをオーダー制に変更する。石垣市が対応指針として示す宿泊客の検温、チェックアウト3日後の健康状態確認なども実施する予定だ。本土直行便の大幅減便が続いているため、6月20日ごろまでの予約状況は不調だが、6月下旬から8月にかけては徐々に予約が入り始めているという。
高橋秀明総支配人は、「行政と手を組んで対策をしっかり打ち出すことで、石垣島、八重山は安心な地域だという形に持って行きたい」と話した。
「マインド回復に時間」りゅうぎん総研・久高専務
沖縄観光の7割は国内客が占めている。6月以降に国内旅行が動き始めるのならば沖縄経済にプラスの効果を与えるのは確実だ。ただ再開して一気に戻ってくるとは考えられない。感染拡大を防止しつつ経済損失を抑えるようにバランスを取るのは難しく、回復までには長い期間がかかるだろう。国や県はさらに強力な支援をするべきだ。
日本人はリスクに敏感な面があり、6月に再開されたとしてもマインドの回復までには時間を要すると考えられる。航空路線も、しばらくは感染拡大防止のために席の間隔を空けるなどの措置を続けて稼働率を意識的に抑えることが予想される。
最盛期の夏に向けて少しずつ観光客は戻ってくると思うが、今年は授業時間の関係で夏休みが短くなるため、ファミリー層の誘客も厳しさが予想される。県民の観光を促進する動きは重要だが、インバウンドも含めた外からの需要消失分を県民需要だけで埋めることはできない。
県内では、観光という大きな需要が蒸発し、県民消費も外出自粛で落ち込んでいる。企業経営へのダメージは今後さらに明確に現れてくる。企業倒産が相次ぎ、雇用が失われてからでは遅い。県としても、例えばコロナ対策基金として自由に使える予算を多めに組んでおくなど、スピーディーな対応をできるようにしていくべきだ。