漫湖に赤土大量流入 工芸振興施設工事で 生態系に影響も


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大雨で流入した赤土で染まった漫湖=6日午前8時ごろ(漫湖水鳥・湿地センター提供)

 5月上旬に沖縄本島南部で発生した豪雨で、ラムサール条約に登録されている漫湖に、約500メートル離れた沖縄空手会館(豊見城市)そばで同市と県が実施する公共工事の現場から赤土が大量に流入した。漫湖水鳥・湿地センターの職員が赤く染まった水面を確認し、県南部保健所は7日に県と市に流出防止策を講じるよう行政指導した。同センターや漫湖を観察してきた専門家によると、2018年から同区域での関連工事に起因するとみられる赤土流出が確認されており、漫湖独特の生態系に影響を及ぼしかねないと指摘している。

 赤土流出が確認されたのは5月2、6日。空手会館そばで県が実施している「沖縄工芸産業振興拠点施設」の整備と、その近くで豊見城市が実施する豊見城城跡地の駐車場・園路整備の工事現場から流出した。

 県施設整備課によると、2日の大雨で土砂流出を防ぐ土手が決壊し、流れ出た水と土砂が豊見城市の工事現場の土砂も巻き込み、用水路を伝って漫湖に流れた。県はその日に土手を修復したが、6日の大雨で別の箇所が再び決壊した。

 県は「赤土等流出防止条例に基づく対策はしたが、想定以上の大雨だった。6日の雨を受けて小堤工(土手)をさらに高くした。今回の対策が十分かは再度検討する」とした。豊見城市は工事現場の裸地を覆ったり、濁水処理機を設置したりして対策を講じた。

 湿地センターは「土砂や小石が流れ込めば軟らかい泥地が硬くなり、魚類やカニ、貝などの生息に影響を与える。これらを餌とする水鳥の飛来にも影響しかねない」と指摘した。漫湖を長年観察してきた「沖縄自然環境ファンクラブ」の藤井晴彦代表は、土地改良や都市化に起因する土砂などの流入で漫湖の「陸地化」が進んでいると警鐘を鳴らし、「今回の工事に限らず周辺環境を全体的に考えてほしい」と指摘した。