県内の野菜や果実の流通を担い、社会生活に欠かせないインフラ機能を持つ県中央卸売市場で、競り人による青果物の不正取引が発覚した。
市場は農家が生産した青果物を受け入れ、競り人は農家に代わり仲卸業者に販売し、消費者まで流通する。需給バランスに基づき公正な取引と価格形成が求められる市場で、長期にわたって不正取引が行われていたことは、生産者や消費者の不信感を招くものだ。
2人の競り人が受け取っていた額は7年間で1億2700万円に上り、実態はそれ以上の可能性もある。
一度販売した青果物の再販売は、競り人の都合で青果物を高値で販売できる可能性があり、卸売市場法で禁じている。今回の事例では、最初の販売よりも高値で別の仲卸業者に売ることで利ざやを生じさせていたとみられる。
沖縄協同青果は県中央卸売市場で唯一取引業務を任されている。所属する競り人の不正取引が明らかになり、市場の信頼性は揺らいだ。
だが、29日の会見で沖縄協同青果は、今回の不正取引で「被害の訴えはない」と説明するなど、被害者は明確に特定できないという立場を繰り返した。巨額の金銭が動いたにもかかわらず、金銭を集めていた競り人らの動機や影響が及んだ範囲など、実態についてあいまいな点が多く残る。
沖縄協同青果によると、年々市場の青果物の取扱量は減少している。直売所やネット販売など生産者と小売店、消費者が直接つながり、卸売市場を経由しない流通が増えている。多様な販路が生まれる中で、確実な販路や安定的な生鮮品の提供を約束する卸売市場の存在意義が問われている。
第三者委員会による検証で早急に実態を究明し、市場の信頼を回復させる作業を急ぐ必要がある。
(石井恵理菜)