合唱授業はハミングで…マスク着用 音楽の先生も苦心「気持ちが晴れる教科に」


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換気のため窓を開けた音楽室で、マスクを着用したまま授業に臨む児童たち=4日、那覇市の仲井真小学校(大城直也撮影)

 小学校の音楽室に児童らの明るい歌声が響き渡る。ただ、歌詞を声に出して歌うのは1番だけ。新型コロナウイルスの感染防止のため、合唱の時間はなるべく短くする。飛沫(ひまつ)を防ぐためにハミング(鼻歌)でメロディーを刻むこともある。新型コロナは子どもたちの音楽の授業にも変化をもたらした。感染予防のため、音楽の授業は以前と同じようにはできない。児童への指導と感染予防策を両立できるように、教員らは工夫を凝らして授業を進める。

 4日午前10時半過ぎ、那覇市の仲井真小学校(金城和也校長)の音楽室で、マスク姿の6年生の児童らが席に着いた。音楽室の出入り口や教室と廊下の窓ガラスは、換気のため全てが開いていた。エアコンや扇風機を使用しているが、開いた窓からは気温30度を超える外の熱気が風に乗って入り込む。じっとしていても汗ばむような暑さの中で授業が始まった。

 授業は文科省や那覇市が示すガイドラインに沿って行う。音楽の授業で感染リスクが特に高いとされるのは、飛沫が発生する合唱や器楽演奏だ。現段階では感染に気を付けながら合唱も実施できる。しかしマスク着用による熱中症や、感染防止の観点から長時間は続けられない。この日の授業では2曲の合唱をしたが、1番のみを歌うなど短時間だった。

 同校音楽専科の工藤かや教諭は「子どもたちのストレスをためるのではなく、気持ちが晴れる教科になってほしい」と願い、長年合唱を指導してきた経験から「ハミング」を授業に取り入れた。これまで声に出して歌いながら覚えていた旋律の学習はハミングに切り替えた。教科書に記載された歌詞を読み込み、曲が生まれた背景や描かれた情景を考える時間もつくった。

 工藤教諭は「音楽は情操教育に必要不可欠なものだ。今だからこそ歌詞理解などで心情面を深められる」と強調する。その言葉通り、授業では歌詞の理解に重点が置かれた。児童らは曲が生まれた背景を想像し、好きな歌詞や旋律を選んで互いに発表し合った。

 新型コロナの影響は今後も続くことが見込まれる。工藤教諭は現状を前向きに捉え、できることに徹するつもりだ。「マスクなしで歌えるようになったとき、発声の技術や心情面の成長に結び付くはずだ」。工藤教諭はそう語り、マスク越しにほほ笑んだ。
 (下地陽南乃)