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救命ボートで9時間、シャチに囲まれる場面も マグロ漁船沈没 関係者ら機関長の無事祈る 沖縄


救命ボートで9時間、シャチに囲まれる場面も マグロ漁船沈没 関係者ら機関長の無事祈る 沖縄 民間の液化天然ガス輸送タンカーに救命ボートを横付けし、はしごを登ろうとする第八光栄丸の乗組員ら=8月30日、第11管区海上保安本部
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 本島南東沖で沈没した漁船「第八光栄丸」(県近海鮪漁業協同組合所属)の船長とインドネシア人の乗組員6人の計7人が31日、那覇に帰還した。乗組員から話を聞いたという、同漁協に所属する別の漁船乗組員の30代男性=同国籍=は、7人の生還に安堵(あんど)しつつ、捜索が続く機関長(69)について「優しい人だった。とても心配」と身を案じ、無事を祈った。

 男性によると、30日早朝、はえ縄漁開始前に、用を足すため起床し、トイレへ向かおうとしたインドネシア人の乗組員が異臭を感じ、機関室で火が上がっていることに気付いたという。船長や別の乗組員らに事態を伝え、7人で膨張式の救命ボートに急いで乗り込んだ。この時、機関長は別の場所にいたとみられ、姿は確認されていない。

 その後、7人は船から離れ、タンカーに救助されるまで約9時間にわたり、海上の救命ボートで浮遊し続けた。途中、シャチとみられる生物3頭にボートを囲まれる場面もあった。火災を確認した乗組員は、度重なる危険な出来事に、救助まで体の震えが止まらなかったという。

 7人は、民間のタンカーや第11管区海上保安本部による搬送を経て、避難開始から約28時間後の31日午前10時過ぎ、那覇港新港に上陸した。漁協関係者や親族などに迎え入れられたが、疲労困ぱいした様子だった。

 男性は「もし乗組員がトイレに行かなかったら、みんなどうなっていたか分からない」と、仲間との再会に胸をなで下ろした。一方、いまだ行方不明の状況が続く機関長については、「冗談が好きで優しい人だった。何とか無事で見つかってほしい」と思いを寄せた。