沖縄芝居役者の仲田幸子(87)の活動拠点として約40年間営業を続け、5月31日に閉店した「仲田幸子芸能館」(那覇市松山)。最終日は多くの常連客やファンが駆け付け、幸子の舞台を見守った。幸子は「客の笑い声でパワーや元気をもらっていた。悔いはない。最高だった」と感謝の気持ちと店への思いを語った。個人での芸能活動は続けていく。閉店に寂しさを感じているが、また那覇で芝居も打ちたいと意気込んだ。(文・田中芳、写真・喜瀬守昭)
芸能館は1982年に那覇市久茂地で開店し、2008年に那覇市松山に移転。新型コロナの影響前まで365日、台風時も休まず営業した。娘の明美や孫の仲田まさえ、芸能館のメンバーと毎日3回の民謡ショーを行った。56年に夫の故仲田龍太郎と劇団「でいご座」を旗揚げした。稽古も同店で行うなど芸能活動の拠点だった。でいご座は昨年9月の「敬老の日公演」を最後に活動を終了した。
舞台前、まさえと「パーマ屋ゆんた」を歌った。幸子は「来年は平和な世の中でいい年になりますように。コロナは私がみんなたっぴらかす。心配ない」と幸子節を放って和ませた。舞台では「安里屋ユンタ」や「与那国小唄」、「娘ジントヨー」のほか、「ヒヤミカチ節」などを披露し、盛り上がった。
幸子の表情やしぐさがかわいらしい「ハイサイおじさん」も観客を沸かせ、高揚感に包まれた。観客から花束を受け取った幸子は「芸能館とお別れするが、芝居などでまたお会いしましょう」と再会を約束し、カチャーシーを踊ってにぎやかに締めた。
芸能館の前では、琉獅会ら演者が創作エイサーや獅子舞など演舞を披露し、最後のステージに花を添えた。