対馬丸の体験を映像で残す 記念館が「語り部」ビデオ収録


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平和学習向けの撮影で児童に語り掛ける高良政勝理事長=6日午後、那覇市若狭の対馬丸記念館

 1944年8月22日に米潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没した対馬丸の体験談を平和教育に活用してもらおうと、対馬丸記念館で6日、高良政勝理事長(80)の証言を収録する「語り部ビデオ」の撮影が行われた。新型コロナウイルスの影響で平和学習のキャンセルが相次ぐ中、記念館に来られなくても対馬丸の悲劇を知ってもらおうと新たに取り組んだ。

 同館の入館者数は5月45人、6月は5日までに20人と激減。3密を懸念して団体予約のキャンセルが増える中でも、学校などから「生存者や体験者を招いて子どもたちに生の声を聞いてもらいたい」との声が届く。今回は名護市立大北小学校からビデオを撮影し平和教育に活用したいとの要望があり、引き受けた。今後も同様の対応を行うという。

 撮影で講話した高良理事長は当時4歳。家族11人で戦火を避けようと対馬丸に乗り、沈没で両親と7人のきょうだいを亡くしたことなどを説明した。また、高良さんらを迎えた長兄が祖父母に宛てた手紙を紹介した。手紙にはいかだにしがみついた高良さんが救助されるまで、沈まないようにずっと父が支えていたことを船員が目撃していたと記されていた。

 高良さんは「戦争はとても大切な家族を切り裂く。皆さんは世界から戦争が無くなるように頑張ってほしい」とカメラの先の児童に語り掛けた。収録を終えると「目の前にいないと反応がなく、難しい」としながらも、継承のためにあらゆる手法が必要だとした。

 ビデオは6月中旬ごろ、大北小5、6年生向けの平和学習で活用される。撮影した同小の知念綾香教諭(24)は「対馬丸のことは知っていたが、体験談は初めて聞いた。今度は生で聞いてほしい」と話した。