沖縄県議選の大勢が判明した8日未明、玉城デニー知事の表情は険しかった。与党が議席を減らし、野党が議席を伸ばした原因を問われると、力なく語った。「選挙前に予想していたこととはかなり状況が違っていた」
自身の県政運営に対して「中間評価」と位置付けられていた今県議選。玉城知事は与党勢力の過半数死守に奔走した。与党は、沖縄市区を含む国頭郡、宜野湾市、宮古島市の4選挙区を「重点地区」に位置付け、積極的に知事を応援に招くなどのてこ入れを図ったが、沖縄市区の玉城満氏のほか、宜野湾市や島尻・南城市区などで計4人の現職が落選。前回県議選で積み上げた27議席は25に減り、与党内からは「事実上の負けだ」との落胆が広がった。
とりわけ沖縄市区は知事にとって衆院議員時代からのお膝元で、「戦い方」は熟知していたはずだった。だが選挙前から既に玉城知事の影響力をそぐ動きが活発化していた。
3月、「21令和の会」と名付けられた会が発足した。立ち上げたのは安慶田光男元副知事。安慶田氏は翁長前県政を支え「オール沖縄」勢力を生み出す原動力となったが、同会が掲げたのは「与野党逆転」だった。
前沖縄観光コンベンションビューロー会長の平良朝敬氏も安慶田氏と行動を共にし、与党・会派おきなわの赤嶺昇氏や平良昭一氏、玉城満氏に加入するよう働き掛けを強めた。関係者によると、昭一氏や満氏は今県議選でも朝敬、安慶田両氏の支援を受けた。「令和の会」関係者は「(3県議)は『与党』ではない。当選するまでは誰の支援を受けてもいいが、選挙後は『中立』として活動していくことになる」と語る。
一方、定数2の国頭郡区に立候補した昭一氏は玉城知事への不信感を周囲に漏らしていた。知事が政策調整監などを歴任した吉田勝広氏の同区での立候補を許したことで亀裂は深まった。満氏も選挙期間中に「与党」とアピールすることは少なく、周囲に一定の距離を取っているように受け取られ、2氏に対し与党内には「当選したら裏切るのでは」との不信感が募った。
「『オール沖縄』候補の中でも私が信頼を寄せている玉城満を議会に送ってほしい」。選挙戦最終日の6日、沖縄市で開かれた満氏の打ち上げ式で知事は声を張り上げたが、訴えは結実しなかった。県議選を通じ「オール沖縄」内部の不信感は増幅しており、与党過半数の内実は揺らいでいる。 (’20県議選取材班)
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玉城デニー知事就任後初となる県議選は、県政与党が過半数を維持した。しかし現職4人が落選するなど薄氷の勝利となり、一部無所属議員を巡り与野党・中立の間で綱引きが始まっている。選挙戦の内幕や今後の行方を探る。