〈48〉運動のメリットとは? 適切なら「万能薬」に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「運動は健康に良い」には多くの方が同意しますが、運動しない人がたくさんいます。なぜでしょうか?

 そもそも本当に運動は健康に良いのでしょうか? 一般的にはダイエットに効果的とか、筋肉が付くなどと言われていますが、医療の領域でも多くのメリットがあります。

 運動のメリットを具体的に挙げます。まず、高血圧や糖尿病、脂質異常症に効果があります。さらに、心臓や肺の機能向上、時には心不全や心臓の病気にも効果的です。もっと挙げれば、喫煙の影響でなりやすい肺疾患、肺炎や気管支ぜんそくにも効果があります。

 また、適切な運動は膝痛や腰痛の原因である変形性関節症にも効果的です。他にも、骨がもろくなる骨粗しょう症、免疫機能、脳機能(認知症、精神疾患など)にも好影響を与えます。運動すると創傷の治癒が促進され、手術される方の多くの合併症のリスクが軽減します。

 患者だけでなく健常者にも、生活習慣病や他の病気の予防として重要な働きをし、子どもの成長にも大きな影響を及ぼすと言われています。

 これらのメリットから考えると、病気だから運動は禁止とか、重症だから絶対安静にといった不適切な運動制限の考え方を変えなければなりません。例を挙げると、集中治療室に入る重症な患者であっても適切な管理の下、積極的に運動を行った結果、運動におけるさまざまな効果を享受することにより、運動をしなかった患者より治療効果があり、合併症が少なく早く退院できたという報告もあります。

 前述したように運動は多くの疾患に効果があり疾患予防効果があるという点から「万能薬」といえるでしょう。一方で、必要のない絶対安静や運動制限は多くの運動のメリットをすべて手放すことになるのです。

 さあ、みなさん、人生100年時代といわれ、ますます健康寿命の意識が高まる昨今、適切な運動を行うことで、その多くのメリットを手に入れましょう。

 (尾川貴洋、ちゅうざん病院リハビリテーション科)