「自民党がここまで議席を獲得するとは」<記者座談会>(中)選挙結果・政策論争


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
集まった有権者の前で街頭演説する候補者=5月30日午後、本島南部

 任期満了に伴う第13回県議会議員選挙は7日に投開票され、県政与党が25議席を獲得し、過半数を維持した。ただ、与党は現職4人が落選し議席を減らすなど「薄氷の勝利」となった。選挙結果の見方や今後の政局への影響などについて、本紙取材班の記者が座談会を開いた。

<選挙結果>自民への逆風限定的

 A 今県議選の結果をどうみるか。
 B 与党過半数は想定していたが、野党・自民党がここまで議席を獲得するとは思わなかった。
 C 新型コロナの危機管理や検察庁法改正案問題で安倍政権の支持率が急落した。自民には逆風が吹くと予想したけど、影響は限定的だった。
 D 新型コロナ禍で投票率が低下し、強い組織力のある自民と共産がそれぞれ議席を伸ばした。
 E 若い新人候補が出馬した選挙区では、無党派層への支持が浸透し、逆に社民や社大が苦戦した。
 A 「政治分野の男女共同参画推進法」が成立後初めての県議選で、女性7人が当選した。新人の山田マドカ氏も健闘し、滑り込めば女性議員の数が過去最多を塗り替える可能性もあった。女性の政治参加を期待する声が高まっているのだろう。
 C 投票率が過去最低となった。新型コロナの影響があったとはいえ、有権者の政治不信もあると思う。実際に4選挙区が無投票となり、1972年の第1回県議選と並んで過去最多となった。有権者の投票権が奪われたとも言える。選挙への関心を高めるため、候補者たちには政策の見せ方など工夫が求められる。
 E 新型コロナの外出自粛期間中にSNSを活用して政策を訴えた候補者の中には当選した人もいた。今後、ネットを活用した選挙活動が広まれば、若年層の政治参加が高まることも期待できる。
 B 菅義偉官房長官が投開票日翌日の会見で、自民党が議席を増やしたことについて名護市辺野古の新基地建設への「理解が進んでいる」との認識を示したのは曲解だ。これまで県民が何度も示してきた民意も踏まえ、県議選で県政与党が過半数を維持した結果を政府は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

<政策論争>貧困対策議論深まらず

 D 政策論争は深まったか。
 B 各候補とも「新型コロナ対策」を前面に打ち出した選挙戦だった。当選者は疲弊した経済の立て直しが大きな課題だ。
 A 自民が議席を増やしたことは、有権者が玉城県政の新型コロナ対策に納得していないということの証左になるのではないか。「知事にスピード感がない」という声はさまざまな現場から聞こえてきた。
 E 候補者の政策の違いが分かりにくい選挙だった。新型コロナ対策の訴えばかりが目立ち、従来の争点だった子どもの貧困対策や福祉分野の議論は深まらなかったように感じる。
 C 米軍基地問題関係では、自民が県議選では初めて「辺野古移設容認」を打ち出した。
 D 自民は公約にこそ「辺野古移設容認」を盛り込んだが、街頭演説で言及している場面は少なかったように思う。自民が議席を増やした要因に「辺野古」が関係しているのかについては分析が必要だ。
 A 沖縄振興を訴える候補者も多かった。2年後には沖縄が日本に復帰して50年となる。今回の当選者には、現沖縄振興計画の検証と新たな振興計画の策定に向け取り組むことが求められる。
 B コロナ禍で「選挙をやっている場合じゃない」という声もあった。けれども政治は生活に直結するからこそ、県議選の結果は重要性を増した。県民の生活や経済の立て直しに向け、当選者の役割は大きく、責任も重い。

<座談会出席者>
 吉田健一(キャップ、政治部)▽西銘研志郎(同部)▽池田哲平(経済部)▽阪口彩子(社会部)▽下地美夏子(中部支社報道部)