新型コロナウイルスの感染拡大で企業活動に打撃を受けながら、新たな展開を始める製造メーカーもある。「ものづくりの邦」でも取り上げたアパレルブランド「YOKANG(ヨーカン)」(那覇市)だ。紅型の染色手法から、独自の染めを生み出し、県内外の幅広い年齢の女性に支持されている。
生き残り策
アパレル業界は主戦場としてきた百貨店が休業したことや、外出機会が減ったことによる消費者の「おしゃれしたい」というマインドの低下で苦境に立たされている。
ヨーカンも例外ではない。結婚披露宴やパーティーの機会が減ったことで、主力のドレスラインは打撃を受けた。さらに海外への渡航ができないため、生地や糸など材料の仕入れができない状況も続く。デザイナーの山内カンナさん(46)は「現物を見て触って、デザインを考えていくので、現地に行けないのは傷手」と話す。
年に2回、春と秋に新作を発表し、顧客向けの受注会をして生産していくが、今年はそれは難しそうだ。
これまでと同じやり方では商品を作ることさえできない。そんな状況下で見いだしたのが、すでにあるものを使って、今必要とされているものをつくり出すという方法だ。
家にいる時間が長くなって必要とされているものは何かと考え、生産したエプロンは、既製品の無地のエプロンを仕入れ、独自の染めを施し、形を整え商品化した。母の日向けにSNSで売り出すと、数時間で完売した。
持続可能性
ヨーカン最大の強みは独自の染めとテキスタイルの柄を豊富に持っていること。これを生かして6月から展開する新しいラインのテーマは「サステナブル」(持続可能な)だ。
ファッション業界が抱えているのが大量廃棄の問題。流行の移り変わりは速い。流行遅れになったものは売れずに残ってしまい廃棄される。大量生産をしていないので大手ほど多くはないが、ヨーカンも商品を廃棄してきた。「これまではセールで大幅に値引きして売り、それでも残った製品は廃棄していた。これがずっと気になっていた」
生地が手に入らないということを逆手に、作ったけど売れずに残ってしまったドレスをカジュアルラインにリメークしたり、デザインが古くなってしまった数年前の服を生まれ変わらせたりする。自社だけでなく、大手が廃棄するものでもヨーカンでリメークできそうなものは買い取って、生き返らせたいと考えている。臨時休業でじっくり考える時間ができ、真剣に社会課題に向き合った。
「コロナがあったことでやりたいことが明確になった。今はとてもわくわくしている」。不利な条件を克服し生き抜いてきた沖縄の製造業の“DNA”とも言える強さを見た。