ヒアリによる損失438億円と試算 産業から家庭まで影響 「早期発見・対策」が重要


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 強毒がある特定外来生物ヒアリが県内に侵入して定着した場合、経済損失は438億5800万円に上るとの試算を県内研究者らが発表した。積極的な対策が行われなかった場合の推定で、研究者らは「早期発見・早期対策できればこの損失を出さずに済む」と話し、県民の注意を呼び掛けた。5月21日公開の日本生態学会誌に論文を掲載した。

 論文を発表したのは県環境科学センターの青山夕貴子さんと沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者ら。県の外来種対策事業を受託し、官民連携で全国でも先進的なヒアリ防除網を構築してきたメンバーだ。ハワイの損失額を試算した別の論文を基に、県内全域にヒアリが広がったと仮定して家庭、農業、インフラなど6分野で被害額を試算した。

 被害の過半を占めたのは野外活動の制限による損失だ。すでにヒアリがまん延している米国ではピクニックや遊泳、子どもの外遊びなどが制限されているとする世帯が約3割いる。これを県民と、来県する観光客の数に当てはめると、推定被害額は246億1000万円となった。

 家庭では殺虫処理や家財道具の修理・交換、医療費などで推定被害額156億8900万円。インフラでは電気設備や道路の修理、公共施設での駆除などで同27億9600万円だった。

 OISTの吉村正志さんは「ヒアリのニュースも減ってきた。これだけのリスクがあることを改めて認識し、一人一人が意識して守りを固めることこそ重要だ」と訴えた。

 ヒアリは原産地の南米から米国、中国、台湾など各国に広がっている。人間への被害だけでなく生態系への影響も大きい。2017年、国内各地で発見が相次いだが県内では見つかっていない。
 (黒田華)