平和学習コロナで危機 集会や行事の中止相次ぐ 修学旅行向け活動も停止


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努
新型コロナ対策で密集などを避けるため、例年開いていた平和集会を取りやめてDVDでの学習に切り替えた南風原中学校の生徒たち=10日、同校

 県内の小中高校が慰霊の日前後に実施している平和学習の集会や行事が、新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれている。教員らは代替授業を行うなど、沖縄戦や平和を学ぶ機会の確保を模索している。一方、県外からの修学旅行は軒並み中止が決まり、平和ガイド団体の活動はほぼゼロの状態。県外の学生に学んでもらう機会は失われている。

 県立糸満高校は平和学習の一環で2年生が毎年行っていた「平和ウオークラリー」の中止を決定。県立コザ高校もバスで南部戦跡を巡るフィールドワークの中止を決めた。コザ高の玉城淳教頭は「第2波、3波も予見されている。バスを予約して中止した場合、キャンセル料金が発生するので延期も難しい」と説明。「リモートの講演会もできるが、直接語ってもらう場合と同じように伝わるのか検討しないといけない」と語った。

 全校生徒を体育館などに集めて戦争体験者などの証言を聞く平和集会は、密集が避けられないとして相次ぎ中止されている。臨時休校の長期化で授業時数が足りない中、平和学習の時間確保も課題となっている。

 県外からの修学旅行は中止になっていて、修学旅行生を案内する平和ガイド団体の活動はほぼ停止している。県ボランティアガイド友の会の高嶺典子事務局長によると、4~6月のガイドは100%キャンセルとなった。例年は3カ月間で友の会のガイド約1400人が活動し、そのうちの9割が修学旅行生を案内していた。沖縄平和ネットワークも7月までのガイドはすべてキャンセルになったという。
 
 友の会の高嶺事務局長は「今回の中止を機に修学旅行先が変わり、沖縄に来てくれなくなるのではと心配している。県外の学生が沖縄戦を通して平和を学ぶ機会が失われてしまう」と、沖縄戦の継承に危機感を抱いた。
 
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 南風原町立南風原中学校(當間保校長)では新型コロナ対策で3密を避けるため、例年、体育館で開いていた平和学習の全体集会を取りやめ、各教室でDVDを利用した学習に切り替えた。

 10日午前8時20分、各教室の電子黒板で一斉に、沖縄戦から基地問題など現代までの歴史を11分ほどにまとめたDVDの放送が始まった。「体験者を招いた講話も全体集会もできない。それでもどうにか平和学習ができないか」と社会科の照屋あすか教諭が企画した。

 「ことしは戦後75年の節目。本来ならば力を入れて取り組むはずだったが、いろいろなことが縮小の方向になっている」。當間校長も新型コロナによる学習への影響に悔しさをにじませた。

 しかし新たな学習方法には思いがけないメリットもあった。DVDの放送中、各教室では生徒たちが真剣に映像に見入っていた。放送後、その様子を見ていた照屋教諭は「体育館での集会よりも集中している。放送のほうが届きやすいようだ」と語った。

 同校では、子ども向け新聞などを活用したスクラップブック作りも平和学習に取り入れた。生徒たちは記事を使って沖縄戦をどう未来に伝えていくのかというテーマに真剣に取り組んでいる。當間校長は「ことしは『個』でじっくり考えるいい機会と捉えたい」と話した。