条例での制限に危うさ…沖縄市の情報公開「乱用拒否」知る権利への影響は


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条文に権利の乱用に関する規定を盛り込んだ沖縄市情報公開条例の改正案

 【沖縄】沖縄市は18日に開会する市議会6月定例会に、市の情報公開条例と個人情報保護条例の改正案を上程する。情報公開を求める際に請求者が公開請求の「乱用」であると認められた場合、請求を拒否できる条文を盛り込む内容だ。市は制度の健全な運用と維持につながることを期待する一方で、市民の「知る権利」が制限されかねないと懸念する声もある。

 市によると、近年一部の市民による請求が増加し、職員の業務に支障を来しているという。公文書公開請求の件数は2016年度が285件、17年度が393件、18年度が465件だった。現行では社会通念上、適正な権利行使と認められない情報公開請求に対し、権利の乱用という一般法理を適用して請求を却下することが認められている。

 ■慎重な運用

 市でこれまで一般法理が適用された事例はない。市の担当者は「一般法理の『乱用』の基準が明確でない。明文化することで市民にも分かりやすく、乱用的な請求を防ぐ抑止力の目的もある」と説明する。

 また正当な権利行使を妨げることがないよう、乱用の適用には判断基準(要綱)を新たに設ける。改正案を適用する際は全庁的な検討委員会を設置するほか、審議会への報告を義務付け、慎重に判断する。

 市は要綱の作成や条例改正に当たり、静岡県浜松市の事例を参考にしている。浜松市が要綱を公表している点を重視した。沖縄市も今後、要綱を公開する予定だ。市の担当者は「請求者の権利が十分に保障されるよう、慎重な運用が前提となっている」と強調する。

 ■審議会に賛否

 県情報公開審査会の会長を務めた徳田博人琉球大教授(行政法)は、大阪市の事例を挙げ「審査会で十分に議論するなど、現行制度でも権利乱用の防止は可能だ」と述べる。

 大阪市情報公開条例には権利乱用に関する明文規定はない。同市では10年度以降、特定の市民からの情報公開請求が急増していた。13年、このような事案に対し、市情報公開審査会は「情報公開制度の趣旨から乖離(かいり)している」として権利の乱用を認め、「請求を却下すべきである」との答申を出した。

 同市の情報公開請求の件数は13年度の2987件をピークに減少傾向にある。徳田教授は「情報公開制度は市民が日常的に民主主義を直接行使できる手段だ」とした上で「一部の乱用に対処するため、予備的に網を広く設けることは危険だ」と警鐘を鳴らす。

 市議会への提案に先立ち3日、情報公開と個人情報保護に関する審議会が開かれた。改正案について委員の賛否は分かれた。「知る権利が制限されるような印象を与えかねない」などの意見も上がった。

 市は改正案の9月1日の施行を目指す。市民の「知る権利」を十分に保障しつつ、制度運用の質を高める方策が求められている。 (下地美夏子)