自民で出てきた「辺野古見直し」論の内実 中谷氏に続き長島氏 沖縄負担増の懸念も


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 防衛省が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止したことに関連し、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設も断念すべきだとの声が上がっている。国政野党だけでなく、与党の自民党内からも膨大な費用と期間を要する移設計画の見直しを求める意見が出始めた。ただ、いずれも防衛強化を求める趣旨の発言で、別の形で沖縄に新たな負担を強いる危険をはらんでいる。

自由民主党本部(資料写真)

 政府がイージス・アショアの配備計画を停止する理由として、当初の想定よりも技術面の難しさやコストがかかることを挙げたことで、辺野古移設の議論に発展した。辺野古新基地の建設予定地でも軟弱地盤が見つかり、少なくとも運用までの期間が12年、費用は約9300億円に膨らむ見通しとなっている。

 イージス・アショアの計画停止を受けてコメントした玉城デニー知事は「コストと期間を考えたら辺野古の方が無駄だ」とし、新基地建設断念を訴えた。

 元防衛相の中谷元氏がBS―TBSの番組で辺野古移設の見直しに言及し、自民党内の反応として注目を集めた。中谷氏は軟弱地盤を理由とする工事の長期化と工費の増大に対し、「完成までに15年かかり、その間に国際情勢は変わっている」と指摘した。

 ただ、辺野古移設の中止ではなく、「軍民共用」や自衛隊が米軍の役割を肩代わりすることなどの方向を提案している。

 また、中谷氏は2016年8月まで防衛相を務めた。新基地建設予定地に広がる軟弱地盤について、16年3月までには政府が発注した業者の報告書に記載されていた。政府が軟弱地盤の存在を認めてこなかったことについては、中谷氏にも説明が求められる。

 辺野古推進に回帰した民主党政権で防衛政務官、副大臣を務め、現在は自民党に所属する長島昭久氏は15日、自身のツイッターで嘉手納統合案が望ましいとの見解を表明。「あと15年もかかりコストは青天井の辺野古移設計画も同じように決断し、10―15年先を見据えて真に役に立つ防衛装備に国民の税金を有効活用してほしい」と投稿した。

 自民党内から上がる指摘は南西諸島の防衛力強化が前提で県内の新たな基地負担にもつながりかねない面がある。それでも、現行の辺野古移設が「唯一の選択肢」として工事を推し進める安倍政権にとって、身内の自民党内から辺野古移設の費用や期間に公然と疑問が呈されているのはこれまでにない状況だ。

 「ポスト安倍」を見据えた自民党内の動きが次第に顕在化する中、現行計画見直し論への影響も注目される。玉城県政が世論を喚起し、イージス・アショアの問題を辺野古新基地建設問題に波及させることができるかが焦点だ。

(明真南斗)