【識者談話】平和宣言「思いや信念伝わらず」 照屋寛之沖縄国際大学教授


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照屋寛之氏(沖縄国際大教授、政治学)

 県民の一人として、今日の玉城デニー知事の平和宣言からは知事の平和への思いや信念が十分に伝わらなかったように感じた。一方、安倍晋三首相のメッセージは従来と同じような内容だった。知事の宣言は首相メッセージを想定して反論できる内容であってほしい。

 沖縄は戦後75年間、基地と共存させられてきた。陸、海、空全てで基地の被害を受けてきた。「基地との共存では平和はつくれない」という知事の決意をもっと明確にすべきだ。

 宣言ではSDGs(持続可能な開発目標)などが触れられていた。知事の思いを政策として訴える場でならいいが、慰霊の日との意味付けが見えてこない。

 美辞麗句が並ぶ首相メッセージは、これまでの基地問題への強権的、県民無視の対応と違っており、空々しく感じた。このような首相のメッセージは想定できるので、それに反論できる平和宣言はできないのだろうか。平和への思いや歴史認識が感じられる平和宣言が聞きたかった。

 新基地建設が進む辺野古では軟弱地盤が見つかり、県民は政府に反論できる手段を得たので、それに触れても良かったのではないか。万国津梁(しんりょう)会議の提言も出たので、それをどう生かすのかということも県民は聞きたかったと思う。基地は平和に逆行するという沖縄の思いをもっと文面に入れるべきだった。

 基地に立ち向かうのは平和への手段だ。知事本人がどのように平和的な沖縄を創造したいのか語ってほしかった。