〈49〉脇ストレッチ 肩の痛みの改善に


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 肩の痛みが肩の周囲の柔らかさの違いにより生じていることが外来で多くみられます。例えば、腱(けん)の炎症や断裂などは、その腱にかかるストレスが強くなると生じてきます。

 腱は筋肉につながっており、筋肉がうまく伸縮しなければ腱にストレスが強くかかりやすくなります。当然のことながらその筋肉の伸縮性をよくしてやることで腱にかかるストレスが減り、腱の炎症や断裂が少なくなります。また、肩前方に痛みが生じていたとき、前方の症状に対してのみ治療を行うと、一時的に症状は改善しますが、しばらくして同じ痛みが出てくることが多くみられます。

 この場合、多くは後方の関節周囲が硬いために肩を動かすたびに上腕骨頭が前方に押し出されて前方にストレスがかかっているからです。よって治療は後下方のストレッチを行う必要があります。

 しかし、通常のストレッチでは肩甲骨と腕が一体となって動いているため、肩甲骨と背骨の間の筋肉はストレッチされますが、肩甲骨と上腕骨の間のストレッチはされません。ポイントは、肩甲骨の動きを止めて腕を動かし、肩甲骨と腕の間のストレッチ(脇ストレッチ)を行うことです。

 方法としては、仰臥(ぎょうが)位から側臥(そくが)位の中間位で床の上に横になり、肩甲骨を床で圧迫するように固定してから腕を動かして脇ストレッチをします。立位では、壁などに肩甲骨を押し当てて同じように行うことも可能です。

 日常では腕を下ろしている状態が多いため、脇ストレッチがされていません。筋トレや重労働、スポーツでの投球動作でも肩関節後下方の外旋筋を多く使い、肩甲骨と腕の間をより硬くすることがあります。そして、脇ストレッチがなされていないために、動作時に肩後方の拘縮による後方の痛みや前方へのストレスによる痛みが慢性的に生じてしまいます。脇ストレッチを行うことで、肩の動きのバランスが良くなり、痛みを生じにくい肩を保つことができます。

(安里英樹、首里千樹の杜クリニック 整形外科)