【糸満】糸満市摩文仁の平和の礎で23日、県内の声楽家4人が「えんどうの花」など5曲を合唱した。合唱は全戦没者追悼式の直後、降りだした雨が上がったと同時に突然、始まった。参列者らは最初、驚いた様子で眺めていたが、歌声が響き渡ると聞き入っていた。
新型コロナウイルス感染拡大防止で慰霊の日関連の音楽イベントができなかったため、声楽家の喜納響さん(31)らが仲間に声を掛けて企画し、飛び込みで歌った。響さん、喜納和さん(29)、伊良波良真さん(31)、亀谷早紀さん(29)が参加した。響さんは「歌うことしかできないので、戦没者へ鎮魂の思いを込めて歌った」と話した。
兄と姉をしのび指笛で 西原の浦崎さん
【糸満】宮古島の旧平良市出身の浦崎幸夫さん(75)=西原町=は23日、平和の礎の前で指笛で「アメージング・グレイス」と「涙そうそう」を吹いて、台湾疎開中に幼くして亡くなった兄の良三さんと姉の直子さんをしのんだ。宮古島から一家で台湾に疎開したが、生活状況はひどく、2人は栄養失調で亡くなり、生まれたばかりの浦崎さんは一命を取り留めたという。「2人は長く生きることができなくて、かわいそうだった。二度と戦争を起こしてほしくない」と語った。
三線と歌で平和に願い 金城さん姉妹
【糸満】「追いやられて海に飛び降りた人を慰めたかった」。南風原町の金城望愛(のあ)さん(15)と琴さん(14)姉妹は23日午前9時前、糸満市摩文仁の平和祈念公園で三線を弾き、民謡「平和の願い」を歌い上げた。三線の先生や民謡の歌詞を通じ、沖縄戦の歴史を学んだ。
三線を始めたのは望愛さんが小学6年、琴さんが同5年の頃。沖縄戦を体験した親族は亡くなっており、身近な思いを聞く機会はなかったという。「平和の願い」のように、沖縄戦を忘れずみんなで平和を目指そうと歌う民謡から「歌の意味に込められた沖縄戦のことを知った」と口をそろえる。
望愛さんは「慰霊の日は沖縄戦を知る機会だと思う」と話す。琴さんは「少しでも戦争が起きないように、できることを考えたい」と、決意を語った。