ジュゴンが「大浦湾生息の可能性」 沖縄防衛局設置の環境監視委員が指摘 保護の重要性高まる


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立て工事現場で確認されていたジュゴンについて、沖縄防衛局が設置した環境監視等委員会の委員から「ジュゴンが大浦湾の中を生息場にしている可能性も考えられる」との発言が上がっていたことが分かった。第26回委員会の議事録に記されている。

 現行の環境保全措置で防衛局は、ジュゴンはあくまで大浦湾の外に主な生息地を置いて餌を食べる時などに大浦湾に回遊してくるという前提に立っていた。大浦湾内を主な生息場所としているなら、ジュゴン保護にとっての重要性はより高まる。

 米下院軍事委員会の即応力小委員会が現地時間の23日に可決された国防権限法案でも、ジュゴンを含む環境計画について報告書を提出するよう国防長官に義務付ける項目が盛り込まれた。

 県内の識者らからも「大浦湾の重要性が高まっている」との指摘がある。一方、ジュゴンとみられる鳴き声が確認されたのは工事を実施していない日が多いため、大浦湾を拠点にしているのではなく、工事がない日に幸いとして来遊しているとの見方も強い。

 実際のジュゴンの動向はさらなる調査結果・分析が必要とみられる。ただ、防衛局が前提としてきたことが崩れつつあるという懸念の声が委員会で上がるのは異例だ。

 議事録によると、委員会で防衛局担当者はジュゴンが大浦湾内に来遊することは当初から織り込み済みで、従来の保護策で工事を続ける旨を説明した。これに対し、委員の一人が「今回続けて鳴音が検出され、しかも他の場所ではまだ痕跡が確認されていない。ジュゴンが大浦湾の中を生息場としている可能性も考えられる」と述べたのは懸念の表れだ。

 日本自然保護協会の安部真理子主任は「大浦湾の重要性は高まっている。かつて大浦湾内を頻繁に利用していた記録もあり、今年2、3月に鳴き声が複数回確認された。頻繁に訪れていることは間違いない」と指摘した。委員の発言について「これまでより踏み込んでいる。そこまで言うのはジュゴンの専門家なのだろう」と推測した。

 ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹氏は委員の発言について「これまでの前提が崩れるという危機感が表れている。国際自然保護連合(IUCN)が絶滅寸前と位置付けていることがプレッシャーになっているはずだ」と語った。その上で「ジュゴンは移動しながら生息しており、一地域にとどまって生息しているという考え方自体、疑問だ。餌を食べに来遊している時点で重要な生息地だと捉えるべきだ」と強調した。

(明真南斗)