一中通信隊に入隊した安里祥徳さん(90)=北中城村=は、電信第36連隊第5中隊の2等兵として通信業務に就きます。
《四つの中隊に配属された私ども新2等兵の半数以上はさらに下士官が班長として指揮する幾つかの班に編入された。主な業務は沖縄県内に分散布陣した幾つもの守備隊と球部隊本部との間に仲立ちして、無線交信の任務を負うのであった。
私が配属された白沢班は首里城南側の斜面に陣を構えた。伊江島守備隊との交信が主要任務だった。》
白沢班が置かれたのは、現在の首里城南側の首里城南口バス停付近にあった古墓「ジングンジュウウスメーの墓」そばの自然壕です。4人が2組に分かれて24時間交代で働きました。
《主たる勤務内容は、学徒兵が野戦用簡易発電器のクランクを手回しして発電し、送信担当兵が電文を送信。深夜は一睡もせずの勤務なので睡魔との闘いでもあった。非番の翌日は昼食抜きだった。》
安里さんら学徒兵は伊江島から受信した電文を持って第32軍司令部に届け、司令部から伊江島への指示を伝える電文を持ち帰りました。電文を届ける途中、西海岸に浮かぶ米艦船が盛んに砲撃しているのを首里の高台から見ていました。
「この戦はどうにもならないと感じましたね。だけど仲間には『負ける』とは話しませんでした」