キャッシュレス急速普及 小売店が恐れる「ポイント還元後」 制度きょう終了  


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 昨年10月の消費税率引き上げに合わせて国が導入したキャッシュレス決済への「ポイント還元」制度が、30日で終了する。期間中に県内では1万7541店舗が事業に加盟登録した。人口千人当たりの店舗数は12・1店と東京、石川、京都に次いで4番目に多く、小売りや飲食店を中心に多くの業種が事業に参画した。国費による事業終了後も独自のポイント還元を検討する事業者がいるなど、県内のキャッシュレス環境に変化をもたらしている。

キャッシュレス決済に対応する飲食店の店員=29日、那覇市真嘉比のステーキ店「ステーキハウス88Jr.真嘉比店」 写真

 29日に新規オープンした「ステーキハウス88Jr.真嘉比店」は、ランチ客でごった返していた。レジ前ではスマートフォンをかざし、キャッシュレス決済で支払う客も多くみられた。

 運営する沖縄テクノクリエイト(那覇市)は昨年11月にポイント還元事業に加盟店登録した。多種類のクレジットカードやQRコード決済、ICカード支払いなどに対応している。

 同社によると、これまでキャッシュレス決済は支払いの2~3割だったが、ポイント還元事業によって5割程度まで割合が上がっているという。

 仲里太陽総務部長は「現金と違って釣り銭の間違いがないので利便性は高い。キャッシュレスを導入したことで、顧客の層が広がった」と語った。

■制度終了後の懸念

 還元制度の期間中、国の補助によって、キャッシュレス決済事業者が店舗から受け取る手数料は売上額の3・25%以下に抑えられていた。

 しかし、小規模事業者にとっては手数料負担は重くのしかかった。沖縄振興開発金融公庫が実施した調査で、小売り事業者から「キャッシュレス化に取り組んだものの、手数料が増加し収益に影響した」との意見も上がった。

 さらに、6月末にポイント還元事業が終了することから、決済事業者に支払う手数料が引き上げられるとの懸念が上がる。

 政府はキャッシュレス決済事業者に対して手数料水準や入金条件などの情報開示を求めるなどして、手数料引き上げを抑える考えだ。小規模店舗の多い県内で、キャッシュレス決済がさらに普及するかどうかは決済事業者の対応が鍵を握る面もある。

■独自ポイント検討

 スーパーマーケット「ユニオン」を運営する野嵩商会(宜野湾市)はポイント還元事業に参加するため、支払いは現金のみとしていたそれまでの方針を転換し、キャッシュレス決済を導入した。

 だが、「商品を格安で提供するため利益率をぎりぎりまで落としており、決済手数料は割に合わない」(佐喜真保統括本部長)として、プリペイド式電子マネー付きポイントカード「ユニカード」を発行し、自前のキャッシュレス運用に踏み切った。

 サービスが始まった昨年10月以降で約15万5千枚のカードを発行し、店舗でのカード決済率は約46%に上っている。

 還元事業の終了後も、現金をチャージした際にポイントを付与するなど、独自のポイント還元を進める。また、スーパー以外の店舗でもユニカードで支払いができるように他業種との連携も視野に入れ、カードのさらなる普及を目指す。

 佐喜真統括本部長は「キャッシュレスによって、職員が現金を触らないので感染症防止の側面もあったが、客にとっても時間短縮につながっている。他業種との連携で汎用(はんよう)性を高めていきたい」と語った。

 (池田哲平)