【識者談話】戦争遺跡「再調査し、保存を議論する時期」 吉浜忍氏(元沖縄国際大学教授)


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 戦争遺跡について、各市町村の認識に温度差がある。今回の市町村アンケートでも、古いデータを答えている所もあれば、近年の詳細調査を経て答えている市町村もあるとみられる。

 認識に違いがある背景には、日頃から戦跡巡りなどを地元で実施している市町村は、比較的戦跡の重要性について理解がある。予算や文化財担当の人材、安全性の確保など課題はあるが、住民が自分の地域の戦跡に関心があれば、戦跡の保存・公開についての議論につながる。

 中城村は3月に戦争遺跡をまとめた地図付きのガイドブックを全世帯に配布した。各字に戦跡があることがひと目で分かる。足元を掘り下げることも大事だ。

 文化庁が文化財の保護指定基準を、太平洋戦争までと改定したのが1995年。戦跡の文化財指定は県内ではごく少ない。戦跡も文化財となり得るという市町村の文化財保護委員の意識改革も必要だろう。沖縄戦体験者が年々減少し戦跡も風化する中、いま一度全市町村で調査し、戦跡の保存・公開について議論する時期だと思う。

(元沖縄国際大学教授)