2020年1月1日時点の沖縄県内路線価は昨年までの県経済の好況を受けて上昇基調を示し、標準宅地の評価基準額や、県庁所在地の最高路線価の対前年変動率で全国トップとなった。一方、新型コロナウイルス感染症の影響で現状の土地取引は停滞しているとの指摘も出ている。不動産業者によると、現時点で取引価格に大幅な変動はみられないものの、入域観光客の落ち込みが長期間続くと商業地などの取引価格に影響を与える可能性もある。
コロナ禍での不動産市場について、不動産鑑定士の濱元毅氏は「3月後半から4、5月にかけて取引が急激に減っている」と語る。需要者側に買い控えがみられ、売る側も安易に価格を下げないため、取引が成立せず市場が停滞していたとの見解を示した。
■市場のリセット
那覇市内で住宅の建築・売買を手掛ける不動産事業者は感染症の影響を受けて、4、5月の取引は全くなく、売り上げはゼロだった。しかし、この事業者は感染症の影響を「市場がリセットされる機会にはなるのかもしれない」と前向きに捉える。
2013年ごろから商業地を中心に県外企業の土地購入が盛んになり、住宅地の価格にも徐々に波及していった。那覇市内の住宅地の土地取引は、この数年で3割以上坪単価が上昇した地域もあるという。那覇新都心地区などは取引価格が坪単価100万円を超えている。
この業者は「結局は地主の『言い値』で取引価格が変わってくる。ホテル建設が進む商業地の活況で、宅地でも価格を下げない地主も多かった。建築単価も高い状況が続いていたが、少しずつ平常化していくかもしれない」と語った。
■不動産DIの低下
県不動産鑑定士協会(髙平光一会長)が発表した昨年11月~20年5月の不動産市況の業況判断指数(DI)は住宅地、商業地、軍用地ともに半年前と比べて70ポイント以上低下し、いずれもマイナスとなった。同協会は、今後半年間の予測値はさらに落ち込むと予想している。
髙平会長は「収益性が落ちている商業地は厳しいかもしれない。このまま観光客が戻らなければ大幅に価格が落ち込むこともあるだろう」と見通した。
一方、那覇市内の不動産業者によると、緊急事態宣言の解除などを受けて徐々に取引が戻っているとの声もある。濱元氏は「今後の予測は読みにくいが(6月下旬時点で)すでに以前と同水準まで取引が戻っているという事業者もいる。この数カ月間、取引が止まっていたのは事実だが、年間でみると地域と用途によっては上げ基調が広がっていくところがあるかもしれない」との見解を示した。
(池田哲平)