県高校新を共に目指す2人 良きライバル、進路見据えて全力ペダル


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
合同練習で疾走する北中城の玉城翔太(右)と首里東の國吉優希=6月27日、沖縄市の県総合運動公園自転車競技場(喜瀨守昭撮影)

 卒業後に描く未来を自力で切り開くため、全力でペダルを踏む。自転車競技で県内最高学年の世代をけん引してきた北中城3年の玉城翔太(18)と、昨年から急激に力を伸ばす首里東3年の國吉優希(17)は強豪大への進学を希望している。今年はアピールの場となる全国大会が軒並み中止となったため、県総体の記録が自らの力を示す上で大きな指標となる。2人は「県高校新記録を狙う」と奮い立つ。

総体に向けて意気込む北中城の玉城翔太(右)と首里東の國吉優希

 1年時から全国の舞台を踏んできた玉城。昨年は地元開催だった南部九州総体と茨城国体のスクラッチでいずれも決勝進出を果たし、着実に経験を積んできた。練習時から全国レベルのスピードや駆け引きを意識し、全国選抜や全国総体では「スクラッチで日本一を取る自信があった」。

 それだけに中止に対する気持ちの切り替えは今でも難しい。「『全国があったら』と思うときつい。考えないようにしている」。揺れる心を支えるのは、新たなステージで全国制覇を成すという固い決意だ。「大学にいって、今度こそ日本一になりたい」

 今年4月には学校に新たなトレーニング器具がそろい、初めて本格的な筋トレを取り入れた。「筋力が付くと踏む意識が強くなり過ぎるから、軽いギアを回す練習とメリハリを付けてやっている」とスピードを突き詰める。県内では頭一つ抜けた存在だが、ウイルス禍で帰省しているOBの大学生やプロ競輪選手と練習し、日々刺激も多い。「力があることを証明する」と躍起になっている。

 そんな玉城の背中を追うのが、國吉だ。幼い頃から「風を切る感じが好きだった」と高校で自転車を始めようとしたが、進学した首里東に自転車部はなかった。ロードで自主練習を積みながら1年がかりで同好会の立ち上げに奔走し、昨年3月に結実。大会出場が可能になった。

 すぐに挫折が襲う。昨夏の南部九州総体はまだ力不足で、当時県内の2年生でただ一人出場できず、会場で競技を見ていると、悔しさが込み上げてきた。「来年こそ絶対に出てやる」。闘志に火が付いた。アルバイトでためた資金で競技用自転車を買うなど、もともと実直な性格。冬場に走り込みやフォーム確認を徹底して繰り返し、スピードと体力に磨きをかけた。

 得意の3キロ個人追い抜きでは練習タイムで県高校記録を切る。県高体連の山本正英専門委員長も「背中が伸び、フォームが良くなっている。半年で一気に伸びた」と太鼓判を押す。玉城の存在も大きい。「初めは絶対勝てないと思ったけど、ずっと追い掛けてきた。翔太がいなかったらここまで伸びてない」と断言する。ライバルとなった今、県総体では「いい勝負がしたい」と全力で挑む。(長嶺真輝)