沖縄の守護神、雪辱を期す 次の舞台へ決意も固く 水球の仲島徹彦(那覇商3年)未来つむぐ夏(8)


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リラックスした雰囲気で練習に励む那覇商業の仲島徹彦(奥)=6月29日、那覇市の県立奥武山水泳プール(喜瀬守昭撮影)

 沖縄の水球は昨秋の茨城国体で少年男子が10年ぶりに入賞を果たすなど、全国で存在感を増している。その少年男子の守護神を担うのは那覇商3年のGK仲島徹彦(17)だ。コースを読む勘や瞬発力に優れ、世代別の日本代表候補にも選ばれた。ただ2校で競い合う県大会では総体、新人大会をそれぞれ5連覇中の那覇西に一度も勝ったことがない。最後の夏。「チームの連係を高めて勝ちたい」と雪辱を期す。

 小学1年の時に小中学生対象の沖縄フリッパーズで競技を始めた。小学5年でGKに起用されると、肩幅の広い上半身や鋭い瞬発力を生かした飛び出しの速さが存分に発揮され“天職”に。成長を続け、中学3年時に優勝した九州大会では優秀選手に選ばれた。

 順風満帆に思えたが、競技外に落とし穴が待っていた。中学時代を共にした大場龍希(那覇西3年)や伊波盛能(同)と共に那覇西へ進学し全国を目指そうとしたが、受験に失敗。幼少期からの仲間と離れ「気持ちが落ちた」。しかし那覇商からするとスーパールーキーの入部。「仲島がいれば全国にいける」というチームから懸けられる期待感がモチベーションを保つ原動力になった。高校1年の冬、15歳以下の日本代表候補に選ばれた。

 個人能力にたける一方、フィールド全体を見渡すGKに必要な攻守両面での指示出しは苦手だった。物静かな性格で「自分にも他人にも甘く、厳しく言えない」。しかし九州大会にも出場した昨年は強豪校とも戦い「回りを動かさないと勝てない」とチームワークの重要性を認識し、変わった。今では練習中から「カバー、カバー」「中に入れ」と最後尾で声を張る。

 昨年12月には全国高体連水泳専門部が強化を目的に主催するスペイン遠征のメンバー23人に選出され、初の海外試合を経験した。「欧州の選手は腕が長くて日本人とシュートのタイミングが違うし、速さも桁違いだった」。共に戦った全国のライバルたちのレベルも高く、刺激的な毎日はただただ「楽しかった」。

 遠征には那覇西の大場と伊波も招集された。県選抜で出る今年の全国選抜や国体では「日本一を取れると思っていた」。それだけに、相次ぐ全国大会の中止はショックだった。

 一方、失意の中で今後の進路も明確になった。「このままじゃ燃え尽きることができない」。卒業後も競技を続けるか悩んでいた時期もあったが、大学の強豪校に進む意思が固まった。

 競技を通してさまざまな経験をし、心身を成長させてくれた3年間。今は那覇商でプレーしたことに対する後悔はない。「高校最後の大会で、今回こそ優勝したい」。次のステージへの一歩を力強く踏み出すため、固い決意を胸に、ゴール前に立ちはだかる。
 (長嶺真輝)