米軍基地コロナ感染拡大 周辺施設で売り上げ減


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米軍基地内の感染拡大で人通りが減り、閑散とする北谷町のアメリカンビレッジ=13日、北谷町美浜

 米軍基地内で新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、県内の経済界にも波紋を広げている。米軍基地が集中する本島中部の商業施設は来客数が減り、飲食店からも売り上げ減少を訴える声が上がるなど、地域経済には徐々に影響が出始めている。事業者は「感染経路などが分からないと対策の取りようもない」(ホテル関係者)などの不安を募らせ、緒に就きだした観光・経済回復の先行きにも深刻な懸念が広がっている。

 13日午後、北谷町美浜のアメリカンビレッジにある町営駐車場は空きが目立っていた。観覧車前の交差点も人通りはまばら。夏季は多くの観光客が訪れる人気スポット「アメリカンデポ地区」の周辺は、新型コロナの影響による観光客の減少で売り上げが立たないからか、いまだ休業中の店舗も多くみられた。

■「ジレンマ」吐露

 「少しずつ観光客が戻ってきていたが、基地内での感染が伝えられて、明らかに売り上げが減った」。アメリカンビレッジ内にある飲食店従業員の男性はため息交じりに現状を語った。

 複数の店舗によると、米海兵隊が感染症対策で北谷町内のホテルを借り上げ、隔離施設として使用することが取り沙汰された直後から客足が途絶えはじめた。事業者の間では、風評被害などさらなる影響を懸念する声が高まっている。

 ある事業者は「正直、米軍に対して『何をしているんだ』と言いたい気持ちもあるが、観光客と米国人を相手にする事業者が多く、表立って意見ができない。これが北谷の事業者らが抱えるジレンマだ」と複雑な胸中を吐露した。

 米軍が基地外への外出を制限したことで、今後のさらなる売り上げ減を懸念する見方も広がっている。

■客足回復遠く

 基地内での感染者が伝えられ、初の週末となった11、12の両日について、イオンモール沖縄ライカム(北中城村)の佐藤規正GMは「来店客数は明らかに前の週より落ちている」と明らかにした。

 夏のボーナスや定額給付金の効果もあり、消費意欲が回復しつつあるのをとらえ、各専門店は営業自粛していた4~5月の落ち込みを取り戻そうとしている矢先だった。

 佐藤GMは「やっと回復傾向にあるのに、水を差された。情報がなく、お客さまが不安になっている」と指摘した。

 22日から政府の観光促進事業「Go Toキャンペーン」が始まることを受けて県内の事業者も準備を整えている。だが、米軍での感染拡大で開始前から出鼻をくじかれた格好だ。

 航空関係者によると、沖縄は国内の他路線と比べて1~2割増しで搭乗率が回復しているといい、事業者の間で観光客の戻りに期待が高まっていた。

 基地内での感染拡大は米国の独立記念日だった今月4日の大規模イベントが要因だとの指摘があることから、航空関係者は「もうしばらくして、感染者がさらに出てこないか心配だ。7月の4連休(23~26日)は前年の7~8割の水準まで戻る見込みだが、その頃に感染者が増えてくるとかなり痛い」と険しい表情を見せた。
 (池田哲平、玉城江梨子、中村優希)