自粛よそに数百人「イェーイ」マスクもなく 独立記念日、基地外へ<米軍大規模感染>2


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
新型コロナウイルスの大規模クラスター発生が懸念される無許可イベントのフライヤー(画像の一部を加工しています)

 「イェーイ!」。米軍関係者とみられる外国人たちがマスクを着用せずに肩を組み、大音量で流れる音楽に合わせ左右に揺れる。会員制交流サイト(SNS)に投稿された映像だ。上半身裸の人も確認できた。コロナ禍によって県民が自粛してきたムードとはほど遠い、にぎやかな様子だ。6~7月、本島中部の米軍基地内外で似たようなイベントが開かれたという。米軍関係者ら数百人が参加したとみられている。

 14日、県内での米軍関係者の新型コロナウイルス感染者数は3月からの累計で100人となった。今月7日に初めて普天間飛行場に住む軍属5人の感染が確認されて以降、1週間で20倍に増えた。在沖米海兵隊は、普天間飛行場とキャンプ・ハンセンでクラスター(感染者集団)が発生しているとの認識を示した。

 クラスターの背景には、冒頭のイベントの影響は払しょくできない。イベントはバーベキュー名目で6月13日に中城村久場、米国の独立記念日の7月4日にうるま市勝連の肝高(きむたか)公園で実施された。イベント主催者は食事などを持ち寄るよう呼び掛け、6~7時間行われたという。県民が参加していたとの話もある。

 米軍は感染者の詳細な行動履歴を示していない。さらなる感染拡大も懸念される。4日の米独立記念日で、中部の行楽地で米軍関係者とみられる多くの人出も確認されていた。一部の米軍関係者が5日朝まで、基地外の飲食店などで過ごしたとの情報もある。

 在日米海兵隊は6月4日、新型コロナに関する保健衛生上の健康レベルを5段階中2番目に高いC(チャーリー)にしていたが、同17日にB(ブラボー)に緩和。今回の感染拡大を受け、在沖米軍は14日までに、Cに引き上げた。

 全駐労沖縄地区本部によると、日本人の基地従業員からは「非常にたがが緩んでいる」と強い懸念を示す声が上がっている。

許可を得ずに開催 人目つかぬ場所でイベント

 うるま市と中城村で開催され、米軍関係者が多数参加したイベントに共通するのは海が近く、大通りなどから人目につかない場所だった。場所の管理者などから許可を得ず、両イベントは開催されていたとみられている。米軍から寄せられた行動履歴に関する情報を踏まえ、県は「夜の交流で広がった可能性もあるとも思う」との認識を示した。感染者の20人が少なくとも基地外に出て、ビーチや店を利用していた。

 うるま市勝連の肝高(きむたか)公園では米国の独立記念日の4日にイベントがあった。県中城湾港分室が公園を管理している。公園は埋め立て地の崎にあり、最も近い住宅地は入江を挟んだ向かい側にある。イベントは無許可で実施され、昼から夜にかけてバーベキューなどが行われた。やがて周辺住民は騒音苦情として110番通報した。警察官が駆け付け、参加者を解散させたという。

 在沖米軍基地で新型コロナウイルスの感染者の大規模感染が起き、無許可イベントが実施されたことを市民は不安視する。うるま市の中田望さん(63)は「やるべきではなかった。感染症対策も緩かったのではないか。米軍の管理や感染症対策もどういう内容なのか分からない」と情報提供を求めた。

 6月14日、中城村久場の商業施設。備えられたごみ箱には、施設外からの持ち込み物が無断廃棄されていた。前日13日、近くのビーチで米軍関係者とみられる外国人らが参加したイベントが開催された。イベント当日、商業施設の関係者はごみを片付けるよう、主催者とみられる男性に注意していた。

 この男性はほかの場所などでイベントを企画したが、「断られたのでここ(ビーチ)へ来た」と話していたという。イベント参加者も商業施設を出入りしていた。

 商業施設の関係者は「(一般の)利用客もいたし、こちらも風評被害を受けかねない」と危惧した。

 両イベントでは多くの参加者が飲食や音楽を楽しみ、会員制交流サイト(SNS)などでその様子が拡散されていた。本紙はイベント主催者の外国人男性に感染症対策の有無をSNSを通じて質問したが、返答はなかった。在沖米軍関係者の大規模感染判明後、イベントの様子とみられる外国人らが騒いでいる動画の投稿についても一部削除されている。
 (金良孝矢、砂川博範、下地美夏子)