「米国からの入国は制限されているが、基地ならそれ(入国)が簡単に行われてしまっている。まずそれをやめ、しっかり防疫体制に努めていただきたい」。玉城デニー知事は15日、要請日程を終えた後の記者団の取材に、日米地位協定上の問題点を強調した。 米軍関係者が自由に出入りする基地内の検疫の実態は見えづらい。現在、日本政府は米国からの入国を原則として拒否する水際対策を講じているが、米軍人は日米地位協定によって、軍属や家族は別の規定に基づき、それぞれ入国拒否の対象外となっている。
対象外
米軍関係者が羽田空港など民間空港から入国する場合には、全員がPCR検査の対象になる。だが、基地内では日本の検疫手続きが適用されず、海外から入国した米軍人全員がPCR検査の対象とはなっていない。2週間の隔離措置があるとはいえ、無症状の患者までを把握することは困難な状況があると言える。
こうした面を踏まえ、玉城知事らの15日の要請では、これまで指摘されてきた情報開示の徹底に加え、基地内の検疫体制に関する日米地位協定の見直しや、“感染大国”となっている米本国からの米軍関係者の流れを止めることなどが対策として盛り込まれた。
感染源は依然、特定されておらず、玉城知事は「防疫体制が本当に完全なものなのか、大きな疑念を持たざるを得ない」と説明する。
温度差
15日の一連の要請に対し、政府側からは「真摯(しんし)に取り組む」(茂木敏充外相)などと前向きな受け止めがあった。ただ要請項目への具体的な回答は得られておらず、今後、日米両政府が本腰を入れて取り組むかどうかは不透明な要素も残る。地位協定見直しや基地外居住者の人数の提供など、日米双方が難色を示してきた項目も含まれている。
玉城知事らは外務、防衛両省ではそれぞれ閣僚に直接要請できたが、首相官邸では調整していた菅義偉官房長官ではなく、杉田和博官房副長官が対応した。
菅氏は15日の記者会見で「日程の都合がつかなかったということだ」と説明。玉城知事らの要請内容の受け止めについても「まだ見ていない」と述べるにとどめた。前日の14日、コロナ対策の要望で首相官邸を訪れた吉村洋文大阪府知事に対し、安倍晋三首相と菅氏がそろって会談して見せた“厚遇”ぶりとは対照的だった。
玉城知事は菅氏との会談がかなわなかったことについて「どなたにお会いしても要請を(菅氏に)しっかりお伝えいただける」と記者団に語った。 (當山幸都)