フェンス1枚隔てただけの「隣人」 宜野湾市民の不安は増すばかり<米軍大規模感染>6


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米軍基地と宜野湾市民の生活は、フェンス一枚を隔てて隣り合わせとなっている=17日夜、宜野湾市普天間

 新型コロナウイルスの感染者が日ごとに増す、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市。市内には感染者の対応に当たる海軍病院も所在する。金網のフェンスを挟んで、市民らは米軍基地と隣り合わせの生活を送る。米軍関係者が市内の飲食店やスーパーを利用することは、日常の風景となっている。そんな中で基地内での新型コロナ感染拡大が明らかになり、市民らの不安が高まっている。

 「訪問は控えていただきたい」。市内の介護関係事業者が他市町村を訪れようとすると、先方から訪問自粛を求められたとの報告が市に寄せられた。宜野湾市では米軍関係者との濃厚接触で感染した市民は出ていない。それでも県内で「宜野湾市」という言葉に過敏に反応する事態が起きている。

 海軍病院のゲートに面する、県道81号沿いに位置する「ぎのわんヒルズ通り」には、飲食店などが並ぶ。海軍病院の関係者らが飲食店に客として来店することもある。市には「自分が(濃厚接触をして)感染していないか」「北谷町で実施したようにPCR検査を市でもできないか」など、問い合わせが相次ぐ。

 発症2日前から隔離されるまで基地外に出た米軍関係の感染者は、46人に上ることが明らかになった。しかし感染者が訪れた市町村や具体的な場所は公表されず、基地周辺の市民は感染の広がりを懸念する。市民の声に背中を押されて市は17日、市内飲食店従業員らのPCR検査を県に要請した。

 ぎのわんヒルズ通りで飲食店を営む40代の女性店長は「客と最も接触するホールスタッフが一番心配だ。PCR検査があれば積極的に受けたい」と考えている。米軍関係者の感染が発覚してからの来客は「ぴたっと止まった」といい、売り上げは一日3~4万円ほど減少した。「つらいです。減った分の補填(ほてん)をやってほしい」と行政の支援も求めた。

 米軍関係者は基地内だけではなく、一般市民が住む住宅街やアパート、マンションに住むことも多い。スーパーやコンビニへ買い物にも出掛け、生活圏は宜野湾市民とほぼ同じだ。

 市喜友名に住む安次嶺美代子さん(73)は市内のスーパーを訪れた際、米軍関係者がほかの利用客を避けるように買い物をする様子を目撃した。「身近にいる彼らを責める訳ではないが、基地内はどういう状況でどのような対策を取っているか、詳細な情報の開示が市民の不安を払拭(ふっしょく)する」と強調した。
 (金良孝矢)