「人数公表しない」米軍が転換した「衝撃」 次の焦点は入国時PCR検査<米軍大規模感染>7


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米軍と県が開いた実務者会議=15日、キャンプ・フォスターの海軍病院(米軍サイトから)

 在沖米軍基地で新型コロナウイルスの感染が7月に入って急増したことを受け、県民の不安や批判の声に押される形で日本政府や県、米軍などが対応を協議し方針変更を迫られるケースが出ている。

 その一つが感染者数の公表だ。米国防総省は今年3月、基地ごとの感染者数を公表しない指針を打ち出した。それ以降、在日米軍基地の感染情報は関係する地元の保健所に提供されるものの、ごく一部を除き対外的に示されなくなった。

 流れが変わったのは7月11日、在沖基地で60人以上の米軍関係者の感染が判明してからだ。報道が先行し県内に衝撃が走ると、玉城デニー知事は同日中に在沖米軍トップのクラーディ四軍調整官と電話会談し、同意を取り付けて感染者数の公表に踏み切った。

 外務省関係者は「この基地で何人、という情報を出すのは難しい状況だったが、あれだけ感染が出て、かなり強く働き掛けた。米軍にも相当危機感があった」と振り返る。

 ただ、感染者数の公表は沖縄のみの特例という位置付けだ。他の在日米軍基地の対応は変わらず、河野太郎防衛相は17日の記者会見で「沖縄のような例外的なところを除き公表するつもりはない」と強調した。

 一方で、県と米軍が感染情報を共有し対策を協議する実務者協議も15日以降、開かれるようになった。それまで、県と米軍との連絡ルートは日頃からやり取りに慣れているが医療の知見が乏しい「県基地対策課―米海兵隊政務外交部」と、医療に特化しているが渉外関係に不慣れな「県保健医療部―海軍病院」の二つだった。双方のルートが並行していた。

 双方の関係者が集う実務者協議の設置について県の糸数公保健衛生統括監は「互いの立場を理解し、情報提供について擦り合わせができる」と意義を語る。

 ただ、15日の実務者会議で米軍が同意した検査総数などの提供は20日現在、一部にとどまる。21日にも届く見通しだ。

 日米間では、米軍基地を通じて入国する全ての軍関係者へのPCR検査実施も新たに検討され始めた。県や県議会が必要性を訴え続けており、政府関係者は「2週間の隔離措置を講じても感染が増えており、PCRの未実施に目が向けられるのは自然な流れだった」と説明する。実現すれば、無症状者の陽性が判明するケースが増えることも考えられる。

 新たな対策が実効性あるものとなるか、“ブラックボックス”と指摘されてきた基地内の感染状況の把握がどの程度改善につながるか、今後も注視が必要だ。

(明真南斗、當山幸都)