在日米軍基地での新型コロナウイルス感染拡大は、これまで指摘されてきた日米地位協定上の問題点を改めて浮かび上がらせている。
日米地位協定や関連の日米合意に基づき、米軍基地内では米側の検疫手続きが適用される。米軍人のみならず、軍属や家族も適用の対象範囲だ。日本政府の水際対策では、民間空港から入国する場合全ての米軍関係者がPCR検査と2週間の隔離措置の対象となるが、米軍基地内では2週間の隔離措置はある一方、PCR検査は症状のある場合のみが対象となっている。
羽田空港から入国した米軍関係者がPCR検査で陽性と判明するケースも相次いでおり、基地内のPCR検査が徹底されていないことが、感染拡大につながった可能性がある。無症状者の感染ケースが多くあることを受け、基地内からの入国時でも全ての米軍関係者がPCR検査を実施するよう、日米間での調整が始まった。
県はもともと、日米地位協定を見直し、基地内の検疫に国内法を適用すべきだと指摘してきた。在日米軍のコロナ感染拡大で基地内の不透明な検疫体制がクローズアップされ、県や県議会では改めて見直しを求める立場を強めている。ただ、日本政府は「現行の制度でしっかり対応できるようやっていきたい」(河野太郎防衛相)と否定的だ。
21日の県議会米軍関係特別委員会で、県の金城賢知事公室長は「さまざまな要求をしてきたが、検疫の問題は急を要する。この機会に60年改定されていない地位協定を改定する方向で、他県とも意見を調整したい」と述べた。
一方で、県や市町村が、基地外に暮らす米軍関係者の情報を持ち合わせていない現状も浮き彫りとなった。
日本国内の法律上、外国人でも日本に住む場合は住民登録の必要がある。だが、日米地位協定9条で米軍関係者の外国人登録は免除され、住民登録も不要。そのため、自治体が地元の基地外に住む米軍関係者の人数を把握できない現状がある。
県内では、2008年に発生した米兵による女子中学生暴行事件を受け、米側が基地外居住者数を日本政府を通じて関係市町村に提供するようになり、防衛省は11年3月時点の人数まで対外的に公表していた。その後は関係市町村に公表しないことを前提に情報提供するようになったが、米側は13年3月時点を最後に「国際社会での米軍に対する脅威」があるとして、日本政府にすら情報提供しなくなった。
県は、基地外居住者について「行政施策の基礎となる重要な情報」だとして、市町村ごとの詳細な情報提供を求めている。
(當山幸都、明真南斗)