地方自治のあり方問う 農水相指示の是非が焦点 辺野古サンゴ訴訟


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辺野古の新基地建設に伴うサンゴ移植で、農水省の関与取り消しを求めた訴訟を提起した県の弁護団=22日、那覇市樋川

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に向けた大浦湾のサンゴ類の移植許可を巡って県は22日、国を相手に提訴した。防衛局による移植を許可するよう求めた農林水産省の是正指示は違法だと訴え、指示の取り消しを求めている。農水省の指示が地方自治法の趣旨に反するかどうかが争われる。裁判に先立ち国の第三者機関・国地方係争処理委員会は県の訴えを退けた。識者は「係争委の判断は問題だ」と指摘する。サンゴ移植とは別に軟弱地盤に対応するための設計変更も県の審査中で、県と国の対立は激しさを増しそうだ。

 名護市辺野古の新基地建設に向けて沖縄防衛局が県に申請したサンゴの移植申請を巡って国と県の対立は法廷闘争に入った。軟弱地盤に対応するために防衛局が申請している設計変更についても玉城デニー知事が承認せず訴訟に発展する可能性がある。対立の構図は同じで、今回のサンゴ移植に関する裁判は、設計変更承認を巡る駆け引きの前哨戦の様相を呈している。

 今回のサンゴ移植は、防衛局が2019年4月と7月に県に許可を求めて申請した。県が標準処理期間を超えても審査を続けていたことから農林水産省が許可するよう県に指示し、裁判に発展した。

 設計変更についてもサンゴの移植許可と同じように県は審査に長い時間をかけるとみられる。県は5月、審査に要する日数を「163~223日」と防衛局に通知した。県が伝えた審査日数は、防衛局が申請書を修正している期間や、追加説明を求めている期間、土日・祝日を除いている。

 申請の内容が多いことなどから通常よりも審査に時間がかかることを示している。国が法的措置を講じることを見越し、先手を打った形だ。6月の県議選では与党多数を維持したものの、与党と野党・中立の議席数の差が縮まっており、玉城県政が21年度予算でも十分な裁判費用を確保できるかも焦点だ。